藤田とVVV会長が作った「10年プラン」 欧州初の日本人監督に向けた新たな挑戦
5年前に2人が作った「10年プラン」とは?
VVVを離れることになった藤田コーチ(右)。しかし、ベルデン会長と作った「10年プラン」はまだ折り返し地点だ 【中田徹】
5年前、2人が「10年プラン」を作ってから、今がちょうど折り返し。藤田コーチはいったん、オランダを去ることになったが、これからも彼とVVVの絆は変わらない。10年プランの目的は、欧州で初の日本人監督が誕生すること。つまり藤田俊哉がVVVの監督を務めることで完遂される。これはベルデン会長と藤田コーチの野望であり、夢である。
ミーティングを終えた2人が、フェンロー駅前にあるホテルのカフェに姿を表した。先ず、私は「(2部リーグでの)優勝、おめでとうございます」と言って握手すると、ベルデン会長は「ありがとう」と言って相好を崩した。
1部昇格、残留もプランの1部
藤田にとって、1部昇格も「10年プラン」の中のひとつだった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
ベルデン NACが1000万ユーロ(約13億円)だったのに対し、VVVは380万ユーロ(約4億9000万円)しかなかった。それでも、今季のVVVはとても良いチームだった。昨季(15−16シーズン)、うちは2位だった。1年前、ストライカーのラルフ・スーンチェンスは28ゴールを決めて得点王になった。育成出身のビト・ファン・コーイ(FW)もブレークし、多くのクラブが彼に注目した。しかし、主力選手たちはみんな、1部リーグ昇格を目指してチームに残って戦ってくれた。その背景にはモウリス(・スタイン監督)が選手たちに、チームに残るよう働き掛けたことがあった。
ラルフには、日本のクラブからもオファーが届いていたが、こうした事情もあって今回はタイミングが合わなかった。ラルフ自身は日本でプレーする気持ちがあるから、またチャンスがあるんじゃないだろうか。私のオフィスには片目の空いただるまが置いてある。これを7月、日本に持っていき、VVV日本のファンクラブミーティングで目入れをする。
藤田 優勝できて本当に良かった。まだ僕が日本にいた時、ハイさん(ベルデン会長)と2人で「10年プラン」を作った。このプランの中には2部リーグで優勝して、エールディビジに昇格することも含まれていたんだ。
ベルデン この5年間で、ものすごい進歩があった。多くの日本人指導者やサッカー関係者がVVVを訪れ、われわれと深い信頼関係を築くことができた。
藤田 良いサッカーをして、エールディビジに残ることもプランに含まれる。そして、日本人選手を獲得して本田圭佑や吉田麻也のように力を付けてステップアップさせたい。圭佑を獲得する時も、ハイさんはプランを作った。当時のVVVは日本人選手を誰も知らなかったから、最初に日本人を獲得することはクラブにとって大きなチャレンジだった。
日本人選手獲得への思い
本田以降、吉田ら多くの日本人選手がVVVでプレーしてきた。ベルデン会長は現在も日本人選手を獲得しようと試みている 【VI-Images via Getty Images】
ベルデン その通り。他のクラブと比べるとVVVはとても予算が少なく、使えるお金は限られてます。それでも、われわれは日本人選手を獲得しようと試みているが、EU(欧州連合)外の選手に対する最低賃金がネックになり、獲得は決して簡単ではない。しかし、解決策を探るために、われわれは創造的でないといけない。まずは今年いっぱい待とう。18年には何とかなるかもしれない。
――17年に日本人選手を獲得するのは無理ですね?
ベルデン もう時間がない。それに多くの日本人選手が12月末までクラブとの契約を残している。だから、われわれは待たないといけない。圭佑がVVVに来てから10年近く経つ。この間、麻也、カレン・ロバート、大津祐樹、田嶋凜太郎と日本人選手がVVVでプレーした。私にとって次の興味は、VVVに所属する選手の誰が日本に行ってプレーするのだろうということ。
――確かに。今までVVVからJクラブに移った選手はいません。
ベルデン 誰が一番になるのだろう(笑)。圭佑も言っていたが、オランダの1部リーグと2部リーグには大きな違いがある。ビドにも言ったが、1部リーグで半年やって、ここで結果を残してから冬の移籍市場でステップアップした方がいい。
圭佑はオランダ2部リーグで活躍してキャプテンを務め、優勝して有名になった。圭佑は移籍を希望したが、私は「半年だけでも良いから、君はVVVに残ってエールディビジでプレーすべきだ」とアドバイスした。あの半年間で圭佑は素晴らしいプレーを披露し、各クラブから彼に対する興味が一気に増えた。圭佑は高いレベルでも通用することを証明したのだ。