ドイツが示した国際舞台での圧倒的な力 実利を優先、柔軟性も持つ若き選手たち

良いイメージを残したチリ、課題はフィニッシュの精度

GKのブラーボ(中央)など、各ポジションに経験豊富な選手を擁しているのもチリの強みだ 【写真:ロイター/アフロ】

 ドイツには及ばなかったものの、チリもまた今大会で良いイメージを残した。PK戦を制したポルトガルとの準決勝は接戦で、内容的にはわずかに相手を上回ったという印象ながら、絶好調のクリスティアーノ・ロナウドにはプレースペースを与えることなく、完封することに成功している。

 ドイツと同じく、チリは何年もかけて現在のプレースタイルを作り上げてきた。10年のW杯南アフリカ大会を率いたマルセロ・ビエルサがベースを作り、14年のブラジル大会を戦ったホルヘ・サンパオリ、そして現在のフアン・アントニオ・ピッツィがその意思を受け継いでいる。

 チリはバランスの取れたチームだ。単発のミスはあるものの、最終ラインから丁寧にパスをつないで攻撃を組み立て、ピッチ中で質の高い連係プレーを見せる。GKにはクラウディオ・ブラーボ、ディフェンスラインにはガリー・メデル、中盤にはアルトゥーロ・ビダル、前線にはアレクシス・サンチェスと、各ラインに経験豊富なリーダーを擁していることも強みだ。

 チリに足りないのはフィニッシュの精度であり、選手たちが作り出すチャンスをゴールに結びつけるパーセンテージをもっと高めなければならない。コパ・アメリカ2015で際立った活躍を見せた“エル・マゴ(魔術師)”ホルヘ・バルディビアの不在も悔やまれる。プレーリズムに変化を加えられる司令塔として期待された彼は、相次ぐけがにより“ラ・ロハ(チリ代表の愛称で赤の意)”から遠ざかっている。

開催国のロシアは最大の「期待外れ」?

グループリーグ敗退に終わったロシア。自国開催のW杯に向け、まだまだ課題は多い 【Getty Images】

 チリと同様に、メキシコもフィニッシュの精度が課題として残った。ポルトガルとの3位決定戦では勝利まであと一歩のところまで至りながら、90分に最終ラインの乱れを突かれてペペに同点ゴールを決められてしまった。左サイドバックや両センターバック間のポジショニングのずれは、彼らが今大会を通して露呈してきたもう1つの課題だ。

 メキシコを率いるフアン・カルロス・オソリオ監督は、豊富な戦術的知識を持つ評価の高いコロンビア人指導者だ。だが、選手のけがもあり今大会を通して、23人中22人を起用する大幅なローテーションを行なってきた彼は、ポルトガルとの一戦で選手交代のミスを犯した。結果としてC・ロナウドの不在も生かせず、またしてもメキシコは好成績を手にするチャンスを逃すことになった。

 メキシコとは対照的に、ポルトガルは手堅い守備力を誇るチームだったが、PK戦で敗れたチリとの準決勝では良い試合ができなかった。経験豊富なフェルナンド・サントス監督は控え組中心のメンバー構成で3位決定戦に挑んだが、ゲーム終盤に4人の主力選手を投入することで逆転に成功している。

 自国開催のW杯が1年後に迫っているロシアのグループリーグ敗退は、今大会における最大の期待外れだった。4強入りを逃したショックは大きいが、スタニスラフ・チェルチェソフ監督はスター選手が不在の状況下で、選手個々より組織力を高めるべく取り組んでいる。良いプレーを見せる時間帯もあったものの、まだまだ課題は多いようだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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