2023-24欧州サッカー各国リーグ「ブレイク選手ランキング」

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 2023-24シーズンの欧州各国リーグも大詰めを迎えているが、ここでお届けするのは今季の台頭が目覚ましかった選手をピックアップし、トップ10をランク付けした「ブレイク選手ランキング」だ。欧州のサッカーシーンを沸かせたタレントたちの顔ぶれは──。

(監修・解説/吉田治良)

ランキング

順位 選手名 POS./年齢※ 所属クラブ 寸評
1 ラミン・ヤマル FW/16 バルセロナ 実質トップリーグ1年目で右WGのレギュラーに定着。ラ・マシア育ちの驚くべき16歳だ。
2 コール・パーマー FW/21 チェルシー 出番を求めてマンCを離れた昨夏の決断が大正解。プレミアでハーランドと得点王争いを。
3 ウォーレン・ザイール=エメリ MF/18 パリSG 弱冠18歳でパリSGの中盤に君臨し、昨年11月にはフランス代表デビュー戦で初ゴールも。
4 アルテム・ドフビク FW/26 ジローナ 欧州5大リーグ初挑戦でラ・リーガ得点ランクのトップを走る。ジローナ躍進の立役者だ。
5 アレハンドロ・グリマルド DF/28 レバークーゼン 初挑戦のブンデスでアシストの山を築き、28歳でスペイン代表デビューも飾った遅咲きだ。
6 ジャラッド・ブランスウェイト DF/21 エバートン PSVからレンタル復帰1年目にCBの定位置を確保。4月末にはリバプールを沈めるゴールも。
7 ヨシュア・ジルクゼー FW/22 ボローニャ 躍進を遂げたボローニャの象徴で、今季のセリエAにおいて最大の発見とも言える大型CF。
8 パウ・クバルシ DF/17 バルセロナ 昨年末までU-19カテゴリーでプレーしていた17歳のCBが、後半戦のバルサの逆襲を支えた。
9 コビー・メイノー MF/19 マンチェスター・U 優勝争いに絡めなかったマンUの唯一の希望。13節に初先発を飾り、そのまま中盤の主軸に。
10 アレクサンダル・パブロビッチ MF/20 バイエルン 守備力と展開力を兼備するアカデミー育ちの20歳のセントラルMFが、昇格1年目から存在感。

※年齢は5月2日時点

解説

マンCを飛び出し、チェルシーで覚醒を遂げたパーマーも、間違いなく今季のブレイク選手の1人だ。プレミアリーグ得点王も十分に狙える【Photo by Chris Lee - Chelsea FC/Chelsea FC via Getty Images】

「ブレイク」の大きな判断基準となるのが、代表招集の有無だ。この1年以内に代表デビューを飾った、もしくは初招集された選手は、それだけ急激な成長曲線を描いたと言えるだろう。とりわけ、いわゆる列強国の代表チームに名を連ねたとなれば、相当なポテンシャルの持ち主と判断していいが、今回のランキングではウクライナ代表のアルテム・ドフビクを除く9人が、それに該当する。

 ちなみにランキングの対象は、あくまでも「2023-24シーズンのブレイク選手」。したがってシャビ・シモンズ(21歳/MF/RBライプツィヒ)、フローリアン・ヴィルツ(21歳/MF/レバークーゼン)、ミッキー・ファン・デ・フェン(23歳/DF/トッテナム)ら、すでに名前が売れている“ブレイク済み”の逸材は除外している。

 一方で、「若さ」はブレイクの判断基準にならない。欧州5大リーグ初挑戦で、いずれもチーム躍進の立役者となったジローナの点取り屋ドフビク(4位)、レバークーゼンの左ウイングバック、アレハンドロ・グリマルド(5位)は、ともに25歳を過ぎて遅咲きの花を咲かせている。

 19ゴールを挙げてラ・リーガの得点ランキングで堂々トップに立つドフビクは、マイナーなウクライナリーグからの参戦1年目という点を踏まえても、上位にランク付けすることに迷いはない。ウクライナ人プレーヤーとして5大リーグで15得点以上を挙げたのは、母国の英雄アンドリー・シェフチェンコ以来だ。

 精緻な左足のキックでブンデスリーガ最多の14アシストをマークし、新加入ながらレバークーゼンのブンデスリーガ初優勝の立役者となったグリマルドも文句なしの選出。ここまで公式戦11ゴールとDFとは思えない攻撃力を有するグリマルドは、今季の勢いを駆って昨年11月に28歳にしてスペイン代表デビューも飾っている。

現在セリエAで4位と大躍進を遂げたボローニャの象徴が、このジルクゼーだ。ここまで11得点・5アシストと結果を残し、推定市場価格も急騰している【Photo by Emmanuele Ciancaglini/NurPhoto via Getty Images】

 もっとも、この2人を除く8人はすべて20歳前後の若手となった。

 PSVでの武者修行を終え、エバートンに復帰した今季、最終ラインの柱としてチームを支えているのが、ジャラッド・ブランスウェイト(6位)だ。財務規定違反による勝ち点の剥奪もあって下位に沈むエバートンだが、48失点はリーグ4位の好成績(4月末時点)。長身ながら足もとも巧みなこの21歳のセンターバックがいなければ、堅守は保てなかったに違いない。今年3月に初招集されたイングランド代表でも、将来的には間違いなく主軸を担える器だ。

 同じセンターバックでは、今年1月にバルセロナでトップデビューを飾り、瞬く間にレギュラーの座をつかんだパウ・クバルシ(8位)も特筆すべきタレントだ。17歳とは思えない冷静さで相手のエースを抑え込む守備力以上に目を引くのが、卓越したビルドアップ能力。前線の味方にピタリと付ける正確なフィードは、いかにもラ・マシア(バルサの下部組織)育ちらしい。3月に歴代2位の年少出場記録となる17歳60日でスペイン代表デビューを果たした逸材の流出を回避すべく、バルサ首脳陣は新契約の締結を急いでいる。

 推定市場価格の上げ幅もブレイク度をはかる1つの目安だが、今季のセリエAでボローニャを快進撃に導いたヨシュア・ジルクゼー(7位)は、昨年6月時点の900万ユーロ(約14億8000万円)から、現在およそ4.5倍増の4000万ユーロ(約66億円)にその価値が跳ね上がっている。オランダ代表の大先輩、ピエール・ファン・ホーイドンクとも比較される193センチの長身ストライカーには、買取りオプションを保有する前所属先のバイエルンの他、アーセナルやミランなども強い関心を寄せており、今夏のステップアップ移籍が有力視されている。

 ともにビッグクラブのアカデミーで育ったセントラルMFのコビー・メイノー(9位)とアレクサンダル・パブロビッチ(10位)も、今季の活躍で市場価格が爆上がり中だ。恵まれたフィジカルと広い視野を武器に、マンチェスター・Uの中盤を支えた前者は80万ユーロ(約1億3000万円)から3500万ユーロ(約57億円)へ、フィルター機能とパスセンスを兼備し、ヨシュア・キミッヒを右サイドバックへ追いやるまでの存在感を示した後者は20万ユーロ(約3200万円)から2500万ユーロ(約41億円)へ、この1年ほどで自身の価値を劇的に上昇させている。

日本で言えば高校2年生の16歳にして、堂々バルサでレギュラーを張るヤマル。今後、課題の得点力に磨きがかかれば、ワールドクラスの仲間入りも【Photo by Pedro Salado/Getty Images】

 ただし、こうして逸材が居並ぶ中でも、トップ3のウォーレン・ザイール=エメリ(3位)、コール・パーマー(2位)、ラミン・ヤマル(1位)の放ったインパクトは別格と言える。

 17歳にして、スタープレーヤーがひしめくパリSGでレギュラーの座を勝ち取り、昨年11月のジブラルタル戦で代表デビュー&初ゴールの芸当をやってのけたザイール=エムリ。今年に入ってややトーンダウンしたとはいえ、守備のタスクを確実にこなしつつ、フィニッシュワークにも絡むボックス・トゥ・ボックス型のMFとして、プロ2年目のシーズンに異彩を放っている。チャンピオンズリーグのグループステージ最終節、ドルトムント戦で奪った値千金の同点弾がなければ、パリSGのベスト4進出はなかった。

 アカデミー時代を過ごしたマンチェスター・Cを飛び出し、新天地を求めたチェルシーで覚醒を遂げたのがパーマーだ。右サイドからカットインして放つ左足のショットでゴールを量産。ここまで20ゴールを積み上げ、プレミアリーグでアーリング・ハーランド(マンC)と熾烈な得点王争いを繰り広げている。31節のマンU戦でハットトリック、33節のエバートン戦では4発と固め打ちができる点も魅力で、さらに9アシストと周りを生かす術も心得る。昨年11月にイングランド代表デビューを飾ったこのウイングストライカーがいなければ、チェルシーの今季はさらに悲惨なものとなっていただろう。

 それでも、ランキングの1位に推すのは、ラ・マシアが生んだ超新星ヤマルだ。なんと言ってもまだ16歳、しかもトップリーグ1年目にしてバルサで不動の地位を確立してみせたのだ。緩急自在のドリブルでマーカーを手玉に取り、右サイドを切り裂くヤマルの仕掛けは、すでにバルサの攻撃に不可欠な武器となっている。とりわけ右サイドを縦に深く抉り、得意の左足アウトサイドで送るラストパスは絶品だ。

 クラブ史上最年少デビュー(15歳290日)、ラ・リーガ史上最年少得点記録(16歳87日)、そしてスペイン代表でも昨年9月のジョージア戦で最年少出場記録と最年少得点記録(16歳57日)を同時に塗り替えるなど、まさにレコードラッシュの眩いシーズンを過ごしたヤマル。末恐ろしい16歳が今後、ガビ、ペドリ、そしてクバルシらとともに、過渡期にあるバルサに新たな時代を築いていくことだろう。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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