コンフェデ杯決勝はチリ対ドイツの再戦に 4強は順当、レベルが劣っていた3カ国

カメルーンの現状はアフリカの弱体化を象徴

長い歳月が過ぎても、フットボール界はヨーロッパと南米が支配し続けている 【写真:ロイター/アフロ】

 コンフェデレーションズカップ(以下、コンフェデ杯)は7月2日(現地時間)に決勝と3位決定戦を迎える。ロシアでの長時間の電車移動による疲労感に抗いながら大会全体を振り返っていくと、準決勝に勝ち上がった4チーム(ポルトガル、メキシコ、ドイツ、チリ)は至って妥当な顔ぶれだったと言うことができる。恐らく5番手のホスト国ロシアにもベスト4入りの可能性はあったが、残る3チームは他と比べて明らかにレベルが劣っていた。

 個々のチームに触れる前に、1つ結論を述べたい。長い歳月が過ぎても、フットボール界はヨーロッパと南米が支配し続けているということだ。他の大陸は蚊帳の外にし、ヨーロッパのチャンピオンズリーグ王者と南米のコパ・リベルタドーレス王者で世界一を決めるインターコンチネンタルカップの復活を望む声が多いのもそのためだ。

 FIFA(国際サッカー連盟)はその他の大陸のフットボールが引き続きトップレベルとはかけ離れた状態にあることを目の当たりにしているはずだ。今大会で言えば、ニュージーランドとカメルーン、オーストラリアがそれに当たる。

カメルーンは今大会、良いところなく1分け2敗のグループ最下位に終わった 【写真:ロイター/アフロ】

 中でもアフリカ諸国の弱体化を象徴するカメルーンの現状は、FIFAに対する大いなる警告だと言える。ヨーロッパのトップクラブで活躍するタレントを多数生み出してきたアフリカ大陸の“無秩序なフットボール”は、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーが説いた「西欧=合理性」という考えに基づき、創造性より集団的規律を重んじる誤った意味での秩序を21世紀初頭から強いられてきた結果、優れたタレントを生み出せなくなってきている。

 現在アフリカ諸国の代表チームを率いている監督の多くは、ヨーロッパ出身の指導者だ。そしてそれらのチームがトップレベルに至らない原因は集団的秩序の欠如ではなく、それとは別の重要な要素を失ってしまったからなのだ。

 カメルーンはアフリカネーションズカップを勝ち抜く過程でも大苦戦を強いられた。やはりヨーロッパナイズされたチームであるエジプトとの決勝では、終了間際の決勝点で辛勝している。そして今回のコンフェデ杯では良いところなく、1分け2敗のグループ最下位に終わった。

オーストラリアはチリ戦で好印象を残したが……

オーストラリアはチリと引き分けたグループ最終戦で好印象を残したが、上位進出チームと比べると明らかにレベルが劣っていた 【写真:ロイター/アフロ】

 オーストラリアはチリと1−1で引き分けたグループ最終戦で好印象を残した。勝利まであと一歩のところまで迫っただけでなく、2点差をつけて逆転で決勝トーナメントに進出する可能性すら感じさせる時間帯もあったのだが、結局、彼らの夢はチリの選手たちが目を覚ますまでの数分間しか続かなかった。

 ロシアについては、スタニスラフ・チェルチェソフ代表監督に対する批判があまりにも厳しすぎる印象を受けた。こちらは世代的な問題とはいえ、カメルーンと同様に、近年のロシアはスラーバ・メトレベリ、レフ・ヤシン、リナト・ダサエフ、オレグ・ブロヒン、イーゴリ・ベラノフ、イーゴリ・ドブロボリスキー、アレクセイ・ミハイリチェンコ、バレリー・カルピン、アレクサンドル・モストボイ、オレグ・サレンコ、アンドレイ・アルシャビン、ロマン・パブリュチェンコといったタレントが出てこなくなっている(旧ソビエト連邦時代の選手も含む)。それでも2018年に控えた自国でのワールドカップ(W杯)に向けた戦力となり得る興味深い選手がいなかったわけではない。

 チームの司令塔としてパスをさばくデニス・グルシャコフには好印象を持った。エースストライカーのフョードル・スモロフももちろんそうだ。一方、CSKAモスクワのスター選手であるGKのイゴール・アキンフェエフはあまりにもプレーが不安定で、ドミトリ・ポロズは試合から消えることが多かった。そういった修正点はあったものの、全てがネガティブだったわけではない。少なくとも目指すプレーの形は見て取れただけに、現時点では結果主義に走るべきではない。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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