ドイツが示した国際舞台での圧倒的な力 実利を優先、柔軟性も持つ若き選手たち

数日間のうちに2つのタイトルを獲得したドイツ

コンフェデレーションズカップはドイツの優勝という極めて順当な結果に終わった 【写真:ロイター/アフロ】

 ロシアで行われたFIFAコンフェデレーションズカップは、極めて順当な結果に終わった。数日前にU−21欧州選手権を制した若き代表チームに続き、世界王者のドイツがチリとの接戦を制し、同大会初タイトルを手にしている。

 数日間のうちに2つのタイトルを手にしたことにより、ドイツは国際舞台における圧倒的な力をあらためて証明した。冷静沈着なヨアヒム・レーヴ監督は、今大会のメンバー選考に際して、2014年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会優勝メンバーの多くに休みを与えることを選んでいる。

 レーヴはマッツ・フンメルス、サミ・ケディラ、メスト・エジル、マヌエル・ノイアー、トニ・クロースらを招集せず、若手中心のメンバー構成で今大会に挑んだ。それはフィリップ・ラームやミロスラフ・クローゼ、ルーカス・ポドルスキ、ペア・メルテザッカーらが代表を去り、マリオ・ゲッツェも長期離脱中の状況下で、新たな世代にチャンスを与えたいと考えたからだ。

 ゆえに23歳のユリアン・ドラクスラーが大会の最優秀選手に選ばれ、ディエゴ・マラドーナからゴールデン・ボールを受け取ったのも偶然ではない。

チリの方が長い時間ボールをキープしていたが……

グループリーグの対戦も合わせて、チリとの2戦はどちらも内容は互角だった 【Getty Images】

 とはいえ、若きドイツが大会におけるベストチームだったと言い切ることはできない。1−1のドローに終わったグループリーグの対戦も、1−0で制した決勝も、チリとの2試合は内容的には互角だった。むしろチリの方が長い時間ボールを支配していたのだが、とりわけ相手のミスを突くという点では、ドイツの方が一枚上手だった。

 サンクトペテルブルクで行われた決勝にて、ドイツは前半30分ごろまでチリのハイプレスにさらされて自陣に押し込まれ、圧倒的にゲームを支配されていた。だがラース・シュティンドルが決めたこの日唯一のゴールは、チリのマルセロ・ディアスが自陣の最後尾でボールを奪われるミスを生かしたものだった。

 メキシコとの準決勝でも相手のミスを逃さず、容赦なく4ゴールを積み重ねたドイツは、勝負どころで実利を優先したフットボールに徹することができるチームだ。しかも選手たちはさまざまなシチュエーションで状況を打開できるテクニックも持ち合わせている。この柔軟性こそ、近年の成功をもたらしてきた秘訣(ひけつ)である。

 また、今回レーヴが抜てきした若い選手たちは近い将来、主力に成長することが期待されている。今大会を通して彼らに積ませた経験もまた、後に実を結ぶことになるはずだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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