五輪メダリストら破り獲得した代表切符 青木玲緒樹、初の世界水泳へ

田坂友暁
 水泳の世界選手権(以下、世界水泳)が7月14日、ハンガリーのブダペストで開幕する。競泳(23日〜30日開催)の日本代表に選ばれた、全25選手の大会への思い、これまでのストーリーとは。全25回連載の第6回は、女子平泳ぎの青木玲緒樹(れおな/ミキハウス)を紹介する。

■青木玲緒樹を知る3つのポイント
・層の厚い日本女子平泳ぎ陣で代表権獲得。
・日本選手権では2冠。五輪メダリストの鈴木聡美に勝利した。
・大きく抵抗の少ないフォームが特徴。課題は前半。

層が厚い女子平泳ぎで長く辛抱し続けた

4月の日本選手権で2冠を獲得した青木玲緒樹(中央)。層の厚い女子平泳ぎにおいて、日本のトップとして世界水泳に出場する 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 積み重ねた『努力』は、必ず実を結ぶ。歩みは遅いかもしれないが、辛抱した分だけ、大きな成果となって現れる。青木玲緒樹は、まさにそれを体現した。

 青木は高校3年生の2012年に、ジュニアの国際大会に初めて出場。しかし、16年リオデジャネイロ五輪(以下、リオ五輪)金メダルの金藤理絵(Jaked)、15年世界水泳金メダルの渡部香生子(JSS立石)ら、レベルの高い日本の女子平泳ぎ陣のなかでは、なかなかシニアの国際大会の代表権を獲得できない。大学生になった青木にとっては、長く、辛抱する時間が待っていたのである。

 それでもくじけず、自分にできることをひたすらこなし、練習を重ねてきた青木にリオ五輪後、チャンスが訪れる。同年11月に日本で行われたアジア選手権の代表入りを果たし、100メートルでは2位、200メートルでは優勝を飾った。さらに12月の世界短水路にも出場した。大学4年間、辛抱を重ねた青木がチャンスをつかみ取り、世界への扉をこじ開けたのだ。

メンタル面の弱さ克服 日本選手権は2冠

競泳日本選手権最終日  女子200メートル平泳ぎ決勝 2分23秒24で優勝した青木玲緒樹(右)。左は2位の鈴木聡美=ガイシプラザ 【共同】

 その経験が糧となり、「いつもは試合前に緊張して力んでしまったり、不安になったりしていた」というが、「今回は、強い気持ちを持って臨めました」と、日本選手権では苦手な100メートルで勝負強さを発揮して優勝し、200メートル平泳ぎでも優勝を飾って2冠を達成した。

 メンタル面の弱さが、青木が持つ本当の力を試合で発揮できなかった大きな要因だった。だが、努力を重ねてきたことで、確実に成長した。そして、気持ちの枷(かせ)を外したことで、その実力をようやく発揮することができたのである。

 後半まで衰えない、大きく抵抗の少ないフォームが青木の泳ぎの特徴だ。それゆえに、スピードが出にくい前半が課題。強い気持ちを持ち、前半から攻めるレースができるかどうか。

 だが、強い気持ちで代表権を勝ち取った青木は、きっとその課題も世界の舞台で克服してくれることだろう。青木が4年間をかけて積み重ねた『努力』を、青木自身が芽吹かせるときがきた。
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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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