トランプ政権下でのNBAオールスター “不確定さ”の中で魅力ある予定調和

杉浦大介

地元ファンをほほ笑ませた結末

地元ペリカンズのデイビスが55年ぶりに得点記録を更新し、オールスターMVPに輝いた 【Getty Images】

 レブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ)、ステフィン・カリー、ケビン・デュラント(ともにゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ラッセル・ウエストブルック(オクラホマシティ・サンダー)、アンソニー・デイビス(ニューオーリンズ・ペリカンズ)……etc。2月19日、ルイジアナ州ニューオーリンズのスムージー・キング・センターで行われたNBAオールスターゲーム。試合前にNBAが誇るスーパースターたちが紹介されると、会場はビッグイベントにふさわしい盛り上がりを見せた。

 やり過ぎでないクールかつ華やかな演出は、さすがは全米屈指の“パーティタウン”、ニューオーリンズ。試合自体は凡庸になりがちなオールスターでは、試合前のセレモニーが何より記憶に残ることも珍しくない。ゲームはやはりエキサイティングではなかったが、見せ場がなかったわけではない。第1クオーターにはデュラントがサンダー時代の元同僚ウエストブルックにアリウープパスを出し、前半戦最大のハイライトを演出。後半にはデュラント、カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンというウォリアーズの4大スターがそろってコートに立ち、普段通りのケミストリーを披露してファンを喜ばせた。

 そして、地元チーム所属のデイビスはなんと52得点を挙げ、ウィルト・チェンバレン(当時ウォリアーズ)が持っていたオールスターの得点記録を更新。試合はウエスタン・カンファレンスが192−182で勝ち、デイビスはMVPも獲得した。

「ニューオーリンズの街とペリカンズのためにやり遂げたかった。僕はこの街を愛している。彼らは毎晩サポートしてくれる。この栄誉を彼らにささげたい」

 試合後にデイビスが笑顔でそう語る姿には、予定調和感があったのは事実である。それも地元ファンをほほ笑ませる分かりやすい結末だったことは間違いない。

トランプ政権の影響はNBAにも……

 ハーフタイムに催されたジョン・レジェンドのコンサートまで含め、NBAは例年通り、安心して楽しめるエンターテインメントを供給してくれた。そんなビッグイベントを見て、喜びとともに、少なからず安堵(あんど)を感じたファンもいたのかもしれない。
 
 今年に入って、ドナルド・トランプ新大統領が難民やイスラム圏7カ国からの入国を制限する大統領令にサイン。全選手の約25パーセントは外国人であり、昨年度のドラフト1巡目1〜16位までのうち実に10人が外国人だったNBAにも、今後に何らかの影響を及ぼしてくるだろう。

 スーダン出身のルオル・デン(ロサンゼルス・レイカーズ)、ソーン・メーカー(ミルウォーキー・バックス)の出国、入国時の対応をめぐり、NBAが国務省に問い合わせを行い、全米的なニュースとなった(編注:2人の出身地は2011年に独立し南スーダンとなった。スーダンは大統領令の米入国禁止7カ国に該当するが、南スーダンは該当しない)。グレッグ・ポポビッチ(サンアントニオ・スパーズ)、スティーブ・カー(ウォリアーズ)といった著名なコーチたちも、トランプの政策に遺憾の言葉を残している。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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