セルティックスは“運命のチーム”か? 「トーマスの悲劇」を乗り越えPO第2Rへ

杉浦大介

プレーオフ前日にエースを襲った悲劇

痛ましいアクシデントから始まったプレーオフ第1ラウンドは波乱万丈のシリーズとなった 【Getty Images】

 エーススコアラーの妹がプレーオフ開始前日に交通事故死――。そんな痛ましいアクシデントから始まったイースタン・カンファレンス・プレーオフ第1ラウンド、ボストン・セルティックスvs.シカゴ・ブルズ戦は、第1シードと第8シードの対戦とは思えないほど波乱万丈のシリーズとなった。

 現地時間4月15日、ワシントン州タコマでのこと。今季リーグ3位となる平均28.9得点を挙げたアイザイア・トーマスの妹チャイナ・J・トーマスさん(22歳)の運転する車が、高速道路を走行中に横すべりし、中央分離帯に衝突。チャイナさんは路肩の標識の支柱に激突し、死亡した。

 「(トーマスは)苦しんでいる。痛ましいことで、彼と遺族はつらい時期にいる。私たちは何よりも、ご遺族のことを考えている。昨夜、そして今日も話をしたが、彼がプレーを望まないのであれば、希望をかなえるつもりだ」

 16日に地元ボストンで行われた第1戦の開始前、セルティックスのブラッド・スティーブンスHCの言葉は、これからシーズン最大の戦いに臨む指揮官のそれとは思えなかった。

 セルティックスのロッカールームにも重苦しい雰囲気が漂っていた。案の定、今季はイースタン最高勝率を挙げたセルティックスは、ホームでの1、2戦に連敗。悲しみにくれるトーマスはそれでも強行出場し、地元ファンの大歓声を浴びたが、チーム全体が空回りしている感は否めなかった。

2連敗後に4連勝を果たし第2ラウンドへ

セルティックスは2連敗後に4連勝を果たし、第2ラウンド進出を決めた 【Getty Images】

 ホームチームが断然有利なNBAにおいて、トップシードのチームがプレーオフ1回戦で2連敗することはめずらしいことだ。悲痛な空気の中で、セルティックスはこのままズルズルと敗退しても不思議はないように思えた。

 しかし、21日の第3戦以降、セルティックスは怒涛の連勝で息を吹き返すことになる。最初の2戦では平均99.5得点、108.5失点だったのが、以降の4試合では105.3得点、90.5失点と大転換。3〜6戦のうち3試合は敵地シカゴで行われたにもかかわらず、結局は2連敗後に4連勝を果たし、第2ラウンド進出を決めた。

 絶体絶命の状況から短期間でチームを立て直した強さに、過去17度の優勝を誇る名門の底力を感じたファンは少なくなかったはずだ。リバウンド争いで劣っていたが、第3戦以降、控えのジェラルド・グリーンを先発起用するスモールラインナップを採用したスティーブンスHCの采配は見事に的中。エイブリー・ブラッドリー(シリーズ平均16.0得点)、アル・ホーフォード(平均15.3得点、8.5リバウンド)といったベテランリーダーたちも攻守両面で奮闘した。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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