トップ選手にあり、錦織に足りないモノ 頂点へ「今は我慢すべきタイミング」
作戦を変えずプレーの質を上げたマリー
第2セット以降、戦術は変えずともプレーの質を上げたマリー 【写真:ロイター/アフロ】
「最初は僕のボールが浅く、圭にベースラインから自由にボールを打たせてしまった。そこで特に作戦を変えたわけではないが、ボールをクリーンに深く打つようにした。恐らく圭は、立ち上がりと同じようにショットを打とうとしただろう。だが僕のショットが深く鋭くなったために、打つ感覚が変わったんじゃないかな」
マリーは、敢えて作戦を変えなかった。代わりにプレーの質を上げることで、錦織のプレーを揺さぶり崩すことを目指したのだ。
そして確かに錦織は、「やるべきプレーがだんだんできなくなりはじめた」ことに圧力を覚え、焦りを感じるようになる。
「彼のレベルが着実に上がっていたので、自分が耐えきれなかったり、ちょっと無理をしてしまったり……」
焦りの中でミスが重なり、主導権をマリーに奪われる。またマリーは第3セット以降、それまで50%台だったファーストサーブの成功率を70%台に引き上げてきた。
錦織が「トップ4の選手は明らかに違う」と言及したのは、このような点なのだろう。
“目指す場所”へは近道もマジックも存在しない
錦織が目指すトップへの道筋には、近道もマジックもない 【写真:アフロ】
準々決勝後の錦織は、敗因をそう端的に総括する。
「一試合を通して、集中力が100%持続できていないのは事実。どの試合も波があるので、アンフォースト・エラーを減らしていければ」
辛勝したチョン・ヒョン(韓国)との3回戦後には、そのような言葉も残していた。
トッププレーヤーに必要なモノが何なのか、それは錦織に見えている。どうすれば獲得できるのか……その道筋も、おぼろげながら見えているのだろう。
「今は我慢すべきタイミングだったり、時間でもあるのだと思う。ひたむきに、練習なり試合なりをやっていくしかない。周りもしっかりサポートしてくれるので、自信を持ってやっていきたいです」
目指す場所へと至る、近道もマジックも存在しない。
勝利も敗北も含めたすべての経験を糧として、時を重ね、一歩ずつ歩みを進めていく。