「120分の死闘」で見えた成長と“限界” 若き日本代表の戦いは3年後の大舞台へ

川端暁彦

守備陣は最大級のパフォーマンスを披露

カナダ大会から「空白の10年」を経て臨んだ戦いは、くしくも同じベスト16で幕を閉じた 【写真:高須力】

 GK林彰洋、DF槙野智章、内田篤人、MF柏木陽介、香川真司ら後のA代表選手が顔をそろえた2007年のU−20ワールドカップ(W杯)カナダ大会から「空白の10年」を経て臨んだ戦いは、くしくも当時と同じベスト16というステージで終幕を迎えることとなった。ベネズエラとの「120分の死闘」(内山篤監督)を演じた日本だったが、セットプレーからの失点を防ぎ切れず、0−1のスコアで苦杯をなめた。

 実のところ、それほど良い予感はなかった。

 前日練習では明らかに疲労感を漂わせる選手が多く、DFを置かないシャドートレーニングでもミスが頻発していた。この時点で「体が重い」と指揮官も同様に感じていたようだった。ベネズエラが中3日で試合に臨んでくるのに対し、日本は中2日という差もあり、そもそも今大会のベネズエラはA代表経験者をズラリとそろえているのも伊達ではないと思える本当に強いチームである。苦しい試合となることは容易に想像できた。

 そうした状況の中だったが、選手たちの頑張りはこちらの想像を超えた領域にあった。これまでディフェンスラインの統率が乱れて失点を喫したり、ピンチを招いていた守備陣は、今大会で対峙(たいじ)した中で最強の攻撃陣を向こうに回して、最大級のパフォーマンスを披露。4バックが一体となって対応したのみならず、個としても最後まで戦い抜いた。

プラン通りに試合を運べていたが……

「プラン通りに進められていた」と試合を振り返った堂安 【写真:高須力】

 右サイドバックの藤谷壮(ヴィッセル神戸)がすでにA代表でプレーし、スペインでも評価を得ているアダルベルト・ペニャランダに食らい付いて好きにやらせず、左サイドバックの杉岡大暉(湘南ベルマーレ)も「こういう選手とやりたかった」と目を輝かせながら今大会4得点と、ここまで最多得点の右ウイング、セルヒオ・コルドバのスピードとパワーに粘り強く抗戦する。中央では冨安健洋(アビスパ福岡)が読みの良さを生かした対応を見せ、中山雄太(柏レイソル)はまさにリーダーとして守備陣を引っ張った。守備陣の出来は間違いなく今大会最高だった。

 試合を重ねるごとにフィットしてきた原輝綺(アルビレックス新潟)の守備能力の高さはここでも際立っていたし、市丸瑞希(ガンバ大阪)のパスを起点とした攻撃も機能しなかったわけではない。隠忍自重を強いられる時間帯があったのも確かだが、「前半0−0というのは想定内。プラン通りという感じで進められていた」とMF堂安律(G大阪)が振り返ったように、全体として決して悪い流れではなかった。むしろ前半で先制点を許してプランが崩れていたグループステージの3試合に比べるとうまく試合を運べていたとさえ言えるだろう。

 ただ、肉体面での苦しさは上から見ているだけでも明らかだった。

 エースFW小川航基(ジュビロ磐田)が負傷で戦列を離れるなか、3試合続けて全力プレーを続けてきたFW岩崎悠人(京都サンガF.C.)のプレーは強度と精度を落としており、堂安にも、イタリア戦ほどのキレはなかった。第3戦を休ませてこの試合に臨んだ左MF三好康児(川崎フロンターレ)が対面のDFロナルド・エルナンデスにほぼ完封に近い内容で抑え込まれていたのも誤算で、全体に攻め手不足は否めず。初先発でフレッシュな状態だったFW高木彰人(G大阪)も、前半40分に杉岡のクロスから初の決定機を迎え、後半12分には市丸から堂安と“ガンバトリオ”のラインがつながり、スルーパスを受けるというこの試合最大のビッグチャンスをつかんだが、いずれも決め切れなかった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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