内山監督「選手たちは胸を張って帰れる」 U−20W杯 ベネズエラ戦後の会見

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ベネズエラ戦後の会見に臨んだ内山監督(中央)。選手たちをねぎらった 【写真は共同】

 サッカーU−20日本代表は30日、韓国の大田ワールドカップ(W杯)スタジアムでU−20W杯決勝トーナメント1回戦のベネズエラ戦に臨んだ。試合は90分で決着がつかず、延長戦の末、0−1で敗戦。日本は惜しくもベスト8進出を逃した。

 試合後の会見で内山篤監督は「2年半の(活動期間を通じて得た)いろいろな経験は、彼らの今後に十分生きると思いますし、胸を張って帰れる選手たちだと思っていますし、誇りに思っています」と語り、選手たちをねぎらった。

 また、世界の強豪国と対戦し、「オン(ボールを持っている状態)の精度について勝負どころで差が出た」という内山監督は、今後の課題として「厳しいプレッシャーの中での的確な判断」を挙げ、日本の育成全体で取り組んでいく必要性を語った。

中2日の戦いで疲れを感じた

――試合の感想をお願いします。

「残念」という言葉がまず最初に出ます。120分の死闘を選手は非常に頑張ってくれました。中2日の疲れというのはどうしても感じられました。フレッシュな選手ももちろん使ってはいました。全体としては、90分の戦いの中で特に後半へ勝負をかけましたが、ああいう残念な結果になりました。ただ、2年半の(活動期間を通じて得た)いろいろな経験は、彼らの今後に十分生きると思いますし、胸を張って帰れる選手たちだと思っていますし、誇りに思っています。ありがとうございます。

――ディフェンスラインの統率が今日はとれていたが、これは意識を改善した?

 映像を含めて頭の中に入れることはしましたし、トレーニングの中でも少しラインのコントロールについての要素は入れました。基本的なことなのですが、(今大会は相手の)スピードのある選手を恐れてしまい、(相手の)バックパスから積極的にラインをコントロールして相手のFWをリアクションに持っていくという作業が少し遅れていました。そのギャップの中を動かれてしまった。そこはより積極的にしっかりラインをコントロールしていこうということで、意識高くやってくれたと思っています。

 前半は少し押し込まれましたけれど、その辺の修正を含めて、「0−0でいいよ」ということで、最初の15〜20分のところを含め、その後の勝負のところでもバックラインは非常によく頑張ってくれたと思っています。

――日本チームが使ったロッカールームが非常に奇麗に掃除されていると評判になっている。これは厳しい規律を課した成果か。(韓国人記者)

 特別な規律はありません。われわれにとっては普通に子供の頃からやっていることです。特にスポーツ選手はそういう教えもありますし、自分たちの後片付けを含めてフェアプレーということで、普通の精神として大事にしてきています。特別何かを私が教えて指導したということではありません。それを教えるような年齢の選手たちではありませんから。彼らが習慣付いていることだと思います。

内山監督が感じた世界との差、取り組むべき課題

内山監督は「オン(ボールを持っている状態)の精度について勝負どころで差が出た」と語った 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

――南米勢(ウルグアイとベネズエラ)と欧州勢(イタリア)には結果として一度も勝てなかった。差を感じたのか、あるいは手応えを感じたのか?

「判断の共有」というコンセプトで、2年半にわたって取り組んできました。ただ、一番肝心な、オン(ボールを持っている状態)の精度について勝負どころで差が出たと思います。今日の試合もそうでした。疲れている中で、ここでスピードを上げていこうというところの手前でのちょっとしたミスが(日本には)ありました。

 もちろんミスしようとしてミスしているわけではないと思いますが、ここの精度をやはり(上げないといけない)。一番厳しい戦いの中で、マイボールになってフィニッシュまでいけるのか、そのボールをまた奪われて、また守備の時間か、あるいはカウンターになってしまうのか。これは大きな差ですね。そこの精度の差。これは日本の課題です。

 ゲームの流れのところで、個人を含めての判断の部分は良くなりましたが、オンの精度が低かったと思います。大きく差が出たと思います。当然、タイプは違いますよ。向こうは体を使って起点を作ってマイボールにして攻めていくのに対し、われわれは動きながらのプレーでやっていく。ただ、そこでスピードを上げていく肝心のところでの動きながらのミスが、一番肝心のチャンスのところで出てしまっていました。一番厳しいプレッシャーの中でどれだけできるかはずっと課題ですけれど、でもここ(世界大会)に来ないと分からないので。数少ないチャンスしかないところで、いかに精度を高めるかということですね。

――これから日本の育成全体でどう取り組んでいくべきだと考えているのか?

 的確な判断です。判断の中での技術が高くないといけません。「日本人はテクニックが優れている」と言いますけれど、間違った判断とそれに基づいた技術では(だめ)。この厳しいプレッシャーの中での的確な判断。それにプラスして、われわれの組織力である同じ絵を描いて共有すること。これをもっと早い年代から、ちゃんと世界で戦うイメージを持った上で、やっていく必要がある。

 われわれが世界の舞台に出ていく回数はどうしても少ないと思うので、その意識をより小さな年代から教えていかないといけない。(そうしていけば)日本の選手は15歳くらいから考える力もしっかり持てると思いますし、1人としても自立していくし、チームとしても自立していく。僕はそう確信しています。そういうチーム作りもしてきたつもりです。もう1つ、2つステージを上げていく。それはわれわれの責任だとも思っています。

――イタリア戦は引き分けを狙って引き分けた。まずしっかり守ることを意識したこの試合など、そういう判断ができていた部分もあるのでは?

 中2日であることを言い訳にしてしまうのは申しわけないのですけれど、昨日の練習の中ですでに少し重かった。(試合までの)残りの1日で少しでも疲労を回復するように伝えました。その中で、立ち上がりを修正して、必ずチャンスはその後に来ると話してきました。ゲームの展開は決して悪くなかった。

 ただ、先ほども話したように、チャンスの手前のところ、フィニッシュもそうでしたけれど、その精度を上げるしかないですね。それも判断だと思います。中2日というコンディションでタフなゲームになる中で、どういう背景でも逃さないでモノにしていくか。そこはずっと言い続けたところですので、彼らは収穫として帰ってくれると思います。

的確な判断と常に強いメンタリティー

内山監督は「的確な判断と常に強いメンタリティー」が伴っていれば必ずよくなると話す 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

――チームは解散だが、選手にはどんな言葉をかけた?

「お疲れ様。残念だった」と1人ずつに声を掛けました。よく頑張ったなということですね。もう少し落ち着いてから話をするとは思いますけれど、とにかく2年半にわたって、判断材料を増やせということと、勝者のメンタリティーと冷静な頭というのを言い続けてきました。感情でプレーすることが多かった選手たちが、この大会では少し整理されて、少しずつこの言葉の意味が分かってきてくれたんだなと。全体的に僕の実感です。これもすべて正解があるわけではないですが、この習慣を持っておくと、今後にもつながっていくという話はすると思います。

 東京五輪、その後の日本代表を含めてそうですね。的確な判断と常に強いメンタリティー。サッカーである以上はピッチで何ができるかという判断ですね。それが伴っていれば必ずよくなります。確信を持っています。

――セットプレーでの失点だったが、セットプレーの守りはもとから今日は劣勢だった。

(失点は)セットプレーの連続からのヘディングでしたよね。基本的には高さとかフィジカルのコンタクトの部分では付いていたと思います。身長のミスマッチになってしまうところもありましたが、そこもよく付いていたと思います。ただ、サッカーのセオリーですね。時にはセットプレーが大きな得点になる。でも、マーキングの責任をもって、時に自分の責任だけではなく、当事者としての意識をもってセットプレーの攻撃と守備をやること、特に守備に関しては大会を通じてだいぶレベルが上がったと思っています。
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