世界卓球で王者・中国が日本を警戒 強さ支えるコピー選手は眉毛もそっくり!?

月刊『卓球王国』

ビッグゲームで敗戦目立つ中国勢

圧倒的な強さを誇る中国だが、平野がアジア選手権で頂点に立ったように、ここ最近は敗戦が目立つ 【写真は共同】

 29日に開幕する卓球の世界選手権個人戦・デュッセルドルフ大会。リオデジャネイロ五輪銅メダルの水谷隼(木下グループ)、史上最年少の17歳でアジア選手権を制した平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)らの上位進出に期待がかかるところだが、その大きなライバルとなるのが最強軍団中国だ。

 前回の個人戦が行われた2015年の蘇州大会まで、シングルスでは中国選手が男子は6連覇、女子は11連覇中。ここ5大会のシングルス成績に絞ってみても、中国選手が同士討ち以外で敗れた試合は男子が4試合、女子は1試合のみという圧倒的強さを誇り、男子は過去2大会、女子は過去6大会連続でベスト4を独占している。

 しかし、今大会は中国にとってこれまでとは少し状況が変わりつつある。昨年のリオ五輪団体決勝では許キンが水谷に敗れ、今年4月のアジア選手権では地元・中国開催ながら、勢いに乗る平野を止められずリオ五輪金メダリストの丁寧ら主力選手が3連敗。許キン、馬龍らも他国の選手に敗れるなど、ここ最近はビッグゲームでの敗戦が目立つ。

 今年4月の代表チームのコーチ人事に際し、中国代表の劉国梁総監督は「若手の育成に力を入れている五輪のホスト国・日本は、中国の最強のライバルになりつつある。その脅威を決して楽観視してはならない」(出典:『新浪体育』)と日本への警戒を口にしていたが、数日後の平野のセンセーショナルなアジア選手権優勝により、その言葉は現実のものとなった。

まゆ毛までそっくり! コピー選手で仮想敵対策

アジア選手権2位の陳夢(左)と3位の劉詩ブン(右)。世界選手権で雪辱を晴らすべく「魔鬼訓練」で強化を積んできた 【写真は共同】

 アジア選手権で平野に3連敗を喫した中国女子代表は、大会閉幕後から31日間にわたる“集合訓練”を実施。期間中の完全オフは2日間のみで、「魔鬼訓練(地獄の特訓)」として中国国内で大々的に報道された。集合訓練の初日には、アジア選手権で中国選手が敗れた映像を選手たちに見せ、敗因を分析させることから始めたという。

 この合宿中には、世界選手権代表選手と海外の要注意選手を想定した「仮想(コピー)選手」とのエキシビションマッチも実施された。中国の脅威となり得る海外選手のプレースタイルに近い選手に、それぞれ仮想○○の役割を与えて試合を行う、いわば対策練習。仮想選手を務めるのは国家チーム(ナショナルチーム)の代表以外の1、2軍の選手たちだ。

 場合によっては対象選手が使用するものと同じラバーを使用させるなど、その「仮想ぶり」には余念がない。かつて仮想・福原愛(ANA)を務めていた王璇(セン)という選手は、プレースタイルだけでなくフォームやプレー中の仕草、さらには髪型やまゆ毛まで本家にそっくりという力の入れようであった。

 中国卓球界では伝統となっている仮想選手ではあるが、その歴史は古く、始まりは1960年代初頭にさかのぼる。当時世界で活躍していた日本男子チームのフォアドライブ対策からスタートし、その後もライバルが現れる度に仮想選手を用意し、対策を施してきた。中には仮想選手から成り上がって世界チャンピオンに登り詰めた猛者もおり、代表から漏れた選手たちとはいえ、その実力は相当に高い。

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