世界卓球で王者・中国が日本を警戒 強さ支えるコピー選手は眉毛もそっくり!?

月刊『卓球王国』

仮想・平野を務めたのはジュニア女王

中国女子の孔令輝監督は、仮想選手というシステムについて「確かに犠牲を払う選手もいる。しかし一概に悪いこととは言えない」 【写真:ロイター/アフロ】

 今回のエキシビションマッチで中国が最も対策に力を入れていたのが、孔令輝・中国女子監督が「我々は彼女のプレーに学ばなければいけない」と評した平野。17歳のアジア女王に対する警戒は強く、今回は「仮想・平野」に4人もの選手を充てた。

 仮想・平野を務めた王曼ユは14、15年の世界ジュニア選手権を連覇した中国のホープで、陳幸同も15年のアジアジュニア選手権を制した次代の主力候補。数年後には世界チャンピオンになっていても不思議ではない選手たちである。

 エキシビションでは世界選手権代表5選手が4試合ずつを戦い、全勝した選手はゼロ。アジア選手権で平野に敗れた丁寧は、仮想選手である陳幸同に敗れ『平野にまたも敗れる』と中国メディアに揶揄(やゆ)された。プレッシャーのかかる代表選手に対し、絶好のアピールの機会と、ノンプレッシャーで向かっていく実力派の仮想選手たち。これほど質の高い対策練習の環境がつくれるのは中国だけだろう。

 仮想選手を登用しての対策について、リオ五輪前に孔令輝監督は「誰のプレーがより対象となる選手に近いか、コーチ陣が対象選手のプレー映像を見ながら、技術や戦術、コース取りなどをチェックして決定していく。確かに犠牲を払う選手もいる。しかしラバーを変えたり、他の打法を研究することは選手たちにとって学びの機会でもあり、一概に悪いこととは言えない」(出典:『新浪体育』)とコメント。仮想選手を務めることも選手にとってはプラスになると語っている。

プレッシャーかかる中国、ボール対策にも注力

 中国男子も同様に、集合訓練とエキシビションマッチを敢行。日本の水谷、丹羽孝希(スヴェンソン)はじめ、ライバル選手にサウスポーが多いことからエキシビションマッチにはサウスポーの選手を4名用意し、サウスポー対策に力を入れている様子だった。

 また、今回の世界選手権で使用されるニッタク(日本卓球株式会社)製のボールへの対応も中国にとっては課題となる。ボールの回転量を武器とする中国選手にとって、回転がかかりにくいとされるこのボールの性質は厄介。さらに安定した品質で、バウンドが均一なため、バウンド後の変化でミスを誘う中国選手特有のボールのイヤらしさも少なくなり相性が良いとは言えない。

 アジア選手権でもこのボールが使用されたが、相次いで中国選手が敗れた要因のひとつだろう。集合訓練ではボールへの対応にも注力している様子だが、中国選手たちがどのようなパフォーマンスを見せるのか注目だ。

 アジア選手権での平野の優勝に関して、リオ五輪団体でドイツ男子を銅メダルに導いたロスコフ監督が「中国でさえ、決して勝てない存在ではないことを証明した」と語るなど、世界においても中国の強さに対する意識は変わりつつある。他国に対して圧倒的な勝率を残す中国だが、大きなプレッシャーのなか臨む大会になりそうだ。

 アジア選手権に続くジャイアントキリングが起こるのか、苦杯をなめた中国が王者のプライドを見せるのか、まもなく熱戦の火ぶたが切って落とされる。

(文:浅野敬純/卓球王国)

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