【ボクシング】最強挑戦者退け、次へと繋げた田中恒成 WBA王者・田口との統一戦リミットは年末

試合後の田中がWBA王者・田口に対戦直訴

WBOライトフライ級王座の初防衛に成功した田中恒成(右)は、リング上でWBA王者・田口良一へ対戦を直訴した 【写真は共同】

「今年中にやりましょう!」。フルラウンド戦い終えたばかりの勝者がライバルに面と向かって直訴した。ドーッと盛り上がる場内――。

 5月20、21日に集中した日本リングのプロボクシング世界タイトルマッチ、その先陣を切ったのが名古屋のチャンピオン田中恒成(畑中)だ。地元の武田テバオーシャンアリーナでWBOライトフライ級タイトルの初防衛戦に臨み、指名挑戦者アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を3−0(117−110、117−110、116−111)の判定で退けた。その直後、テレビのゲスト解説を務めたWBAチャンピオン田口良一(ワタナベ)をリングに招き、統一戦の実現をアピールしたのが冒頭のシーン。

 田中にこう言われた田口も「自分も次、良い内容で勝ったら是非」と応じた。この段階でライトフライ級は主要4団体中3人の日本人王者が並立していた。その中にあって田中と田口は“相思相愛”と言える仲。田中はまずこの日の初防衛戦で快勝し、堂々と対決を呼び掛けるつもりだったのだ。

“横綱相撲”でダウンを奪い強敵を圧倒

プエルトリコ期待のアコスタに対して“横綱相撲”ともいえる展開で圧倒し、ダウンも奪った 【写真は共同】

 実際、アコスタとの試合は21歳の若き王者の存在感をさらに高める内容だった。

 アコスタはWBO本部国プエルトリコが自信を持って送り出した刺客。パワフルな左フックで対戦者をバタバタと倒し、プロデビュー以来の連続KO勝利は16にまで達する。プエルトリコでは、かつての名王者ウィルフレド・ゴメスの再来とまで期待されているホープだ。

 試合はそのアコスタの積極的な攻撃でスタートした。自慢の強打をかざして前に出て、グイグイと田中にプレッシャーをかけていく。左フックのみならず、コンパクトな右ストレートも威力を秘めていそうだ。

 これを田中がさばく。位置取りを変えながら、リングを広く使い、闘牛士のようにアコスタのパンチをかわす。相手の必殺の左フックは最初からダッキングで空転させた。

 アコスタは田中を捕まえようとプレッシャーをさらに強め、距離を詰めると左右のパワーパンチで猛爆する。スリリングな序盤にハラハラするファンも多かったに違いない。しかし田中にすればアコスタの力量をチェックするための作業だった。自らもフェイントをかけて相手をゆさぶり、左ボディーフックや右クロスの高度なカウンターを取り始めた。
 特に3ラウンドから増やした左ボディー打ちは効果を上げた。アコスタの攻撃をしのぐと田中はこれをすぐさま的確に打ち込み、相手の連打を寸断した。4ラウンドは逆にアコスタを下がらせて田中がプレッシャーをかける構図に。そして5ラウンド、右アッパーで効かせた後に右を打ち下ろすと挑戦者はダウン。“横綱相撲”と言えるチャンピオンのパフォーマンスが繰り広げられた。

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