【ボクシング】井上尚弥に待つ“頂上決戦”への道筋 9月に米国進出、年末にバンタム転向へ

原功

圧倒的な強さを見せた井上尚弥は5度目の防衛に成功。大橋会長は井上に待つ今後のプランを明かす 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 プロボクシングのWBO世界スーパー・フライ級王者、井上尚弥(24=大橋)は21日、東京・有明コロシアムで同級2位の指名挑戦者、リカルド・ロドリゲス(27=メキシコ)に3回KO勝ち、5度目の防衛を果たした。途中で左構えにスイッチするなど余裕を見せた末、左フックで2度のダウンを奪う圧勝劇だった。

 まさに“怪物”的な強さだった。井上に対する期待と注目が高まる中、大橋秀行会長は「次は9月、米国でやることになると思う。そして年末にはバンタム級に転向する予定」と今後のプランを明かしている。

指名挑戦者を圧倒 3回KOでV5

2回には左にスイッチするなど余裕を見せた井上。3回には左フックで試合を決めた 【赤坂直人/スポーツナビ】

 ロドリゲスは2位にランクされるWBOの指名挑戦者だったが、スタート直後から井上との力量差は明白だった。井上は「右ストレートに匹敵する強さがある」(大橋会長)という左ジャブで早々と主導権を握り、2回にはサウスポー・スタンスに変えて左ストレートをヒットするなど器用な一面をみせた。

 圧巻は3回だ。左フックのカウンターで先制のダウンを奪い、再開後、さらに左フックをジャストミートしてロドリゲスをキャンバスに沈めた。敗者は「井上はスピードがあってカウンターが巧い。そして瞬間的な爆発力がすごい」と勝者をたたえるしかなかった。試合後、それでも井上は傷ひとつない顔で「間のとり方がスパーリングどおりにできなかった。数センチ、数ミリだが……それが反省点」と話した。完璧な強さを求め、24歳はどこまでも貪欲だ。

 そんな愛弟子の強さについて大橋会長は「尚弥は距離感が抜群。左ジャブ、左フック、右ストレートとどのパンチも破壊力があり、一発で相手を失神させることができる」と分析している。自身もミニマム級で2度の世界王座獲得を成し遂げている大橋会長は、技術面だけではなく、井上の精神力にも感心している。「自分の現役時代を含め、試合前にあれほど平常心をキープできる選手は見たことがない。平常心を保てるということは、冷静な判断ができるということ」と話す。13戦全勝(11KO)の2階級制覇王者は、心身ともに成長途上にありながら、すでに次元のことなるところで戦っていると言っていいだろう。

年末にロマゴンとの頂上決戦を予定していたが……

 井上は当初、全階級を通じて最高の評価を得ていた同じ階級の元WBC王者、ローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)との頂上決戦を計画していた。4階級制覇の実績を持ち、世界的な知名度の高いゴンサレスは危険極まりないリスキーな強敵だが、勝てば大きなリターンが望める相手である。両陣営は順当に勝ち進むことを前提に年末に統一戦で拳を交えるプランを進行させていた。

 ゴンサレスは「井上はパワフルなハードパンチャーで、スピードもある。コンビネーションも素晴らしい」と、ライバルを高く評価。井上も「ゴンサレスはすべての面ですば抜けている。リスクは高いが、戦う価値のある相手。12月に対戦することになると思う」と対戦を楽しみにしていた。

 ところが、そのゴンサレスは3月にシーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)にダウンを喫した末、きん差の判定で敗れ王座を失ってしまった。試合を見た人の多くが「ゴンサレスが勝っていた」と同情するほどの内容だったが、完全無欠と思われたゴンサレスに47戦目で初黒星(46勝38KO1敗)がついた事実は覆らなかった。

 この試合を生中継のテレビ解説をしながら見た井上は「なんて言ったらいいのか言葉が見つからない……」と苦笑いを浮かべたものだ。

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著者プロフィール

1959年、埼玉県深谷市生まれ。82年にベースボール・マガジン社入社。以来、「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間、同誌編集長を務める。01年にフリーランスになり、WOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。専門サイト「ボクシングモバイル」の編集長も務めている。

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