【ボクシング】井上尚弥に待つ“頂上決戦”への道筋 9月に米国進出、年末にバンタム転向へ
圧倒的な強さを見せた井上尚弥は5度目の防衛に成功。大橋会長は井上に待つ今後のプランを明かす 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
まさに“怪物”的な強さだった。井上に対する期待と注目が高まる中、大橋秀行会長は「次は9月、米国でやることになると思う。そして年末にはバンタム級に転向する予定」と今後のプランを明かしている。
指名挑戦者を圧倒 3回KOでV5
2回には左にスイッチするなど余裕を見せた井上。3回には左フックで試合を決めた 【赤坂直人/スポーツナビ】
圧巻は3回だ。左フックのカウンターで先制のダウンを奪い、再開後、さらに左フックをジャストミートしてロドリゲスをキャンバスに沈めた。敗者は「井上はスピードがあってカウンターが巧い。そして瞬間的な爆発力がすごい」と勝者をたたえるしかなかった。試合後、それでも井上は傷ひとつない顔で「間のとり方がスパーリングどおりにできなかった。数センチ、数ミリだが……それが反省点」と話した。完璧な強さを求め、24歳はどこまでも貪欲だ。
そんな愛弟子の強さについて大橋会長は「尚弥は距離感が抜群。左ジャブ、左フック、右ストレートとどのパンチも破壊力があり、一発で相手を失神させることができる」と分析している。自身もミニマム級で2度の世界王座獲得を成し遂げている大橋会長は、技術面だけではなく、井上の精神力にも感心している。「自分の現役時代を含め、試合前にあれほど平常心をキープできる選手は見たことがない。平常心を保てるということは、冷静な判断ができるということ」と話す。13戦全勝(11KO)の2階級制覇王者は、心身ともに成長途上にありながら、すでに次元のことなるところで戦っていると言っていいだろう。
年末にロマゴンとの頂上決戦を予定していたが……
ゴンサレスは「井上はパワフルなハードパンチャーで、スピードもある。コンビネーションも素晴らしい」と、ライバルを高く評価。井上も「ゴンサレスはすべての面ですば抜けている。リスクは高いが、戦う価値のある相手。12月に対戦することになると思う」と対戦を楽しみにしていた。
ところが、そのゴンサレスは3月にシーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)にダウンを喫した末、きん差の判定で敗れ王座を失ってしまった。試合を見た人の多くが「ゴンサレスが勝っていた」と同情するほどの内容だったが、完全無欠と思われたゴンサレスに47戦目で初黒星(46勝38KO1敗)がついた事実は覆らなかった。
この試合を生中継のテレビ解説をしながら見た井上は「なんて言ったらいいのか言葉が見つからない……」と苦笑いを浮かべたものだ。