【ボクシング】井上尚弥に待つ“頂上決戦”への道筋 9月に米国進出、年末にバンタム転向へ
年内にバンタム級に転向
約1.4キロ重いバンタム級への転向は、すでに既定路線となっている 【写真は共同】
これに対し井上には来春まで待てない理由がある。
体が大きくなり、52.1キロ(115ポンド)をリミットとするスーパー・フライ級では減量が厳しくなっているのだ。ライト・フライ級時代には過酷な減量のために試合中に足がつるアクシデントに見舞われたことがあり、そのため一気に2階級上げたのだが、そのスーパー・フライ級でも減量が限界に近づいているというのだ。
大橋会長は自身の現役時代と重ね合わせて「減量はボクサーの可能性を消してしまう」と過度に体重を削ることに強い危惧を抱いている。そのため、極めて近い将来、バンタム級に上げるプランを打ち出している。
現に井上は今回のロドリゲス戦が決まる前、バンタム級のWBAスーパー王者、ザナト・ザキヤノフ(33=カザフスタン)に挑戦することが内定していたが、契約直前になって相手側が「1試合挟んでから対戦したい」として断ってきた経緯がある。約1.4キロ重いバンタム級への転向は、すでに既定路線と言っていいだろう。
バンタム級転向の先に見える山中慎介との頂上決戦
当日はシーサケット対ゴンサレスの再戦、その勝者に対する挑戦者決定戦として行われるカルロス・クアドラス(28=メキシコ)対ファン・フランシスコ・エストラーダ(27=メキシコ)、そして井上のV6戦を加え、スーパー・フライ級トリプル戦になる見込みだ。
井上は「(ロドリゲス戦では)インパクトのある試合ができたが、次は米国でさらに納得のいく試合をしたい。KOを見せたいが、それに執着すると空回りするので平常心でやりたい」と逸る気持ちを抑えている。
そして、年末に日本で計画している次々戦でバンタム級に転向する可能性が高い。大橋会長は「ザキヤノフへの挑戦を含め、バンタム級での試合になると思う」と話す。28戦27勝(18KO)1敗の戦績を残しているザキヤノフは、12カ国で戦った経験を持つたくましい選手だが、今年2月の戴冠試合では、初回に2度のダウンを喫するなど不安定な面も見せている。
総合力では井上の方が大きく勝っており、ザキヤノフ戦が決まれば3階級制覇の可能性が大きく広がっていると言っていい。
バンタム級といえば、WBC王座には12度の防衛を誇る「神の左」山中慎介(34=帝拳)が君臨している。井上がこのクラスに転向するとなると、ファンの期待と関心が両者の対決に向けられることは間違いない。井上は「(山中のことは)バンタム級のチャンピオンなので意識はしている」と明かす。
いまは「たら、れば」の段階に過ぎないが、両者が順当に勝ち進んでいけば、来年のいまごろは日本人同士の頂上決戦――WBC王者・山中対WBA王者・井上の世界バンタム級王座統一戦――が話題になっているかもしれない。