日本ボクシング界をけん引する王者たち V12山中から戴冠1カ月久保までを全紹介

原功

21日に防衛戦を行う井上直弥(右)ほか、現役の日本人世界王者を紹介する 【写真は共同】

 1952年5月19日に白井義男氏が日本に初めて世界王座をもたらしてから65年。日本ボクシングコミッション(JBC)が認定する歴代世界王者は80人を数え、現在も9人が主要4団体のいずれかのベルトを保持している。ベネズエラ出身のホルヘ・リナレス(31=帝拳)を含めれば10人の世界王者を擁しているわけで、米国、イギリス、メキシコなどと並んで「ボクシング大国」の一角を占めるまでになっている。

 さらに20日、21日には村田諒太(31=帝拳)、拳四朗(25=BMB)、比嘉大吾(21=白井・具志堅)の3人が世界に挑戦し、井上尚弥(24=大橋)、八重樫東(34=大橋)、田中恒成(21=畑中)の3王者が防衛戦を控えている状態だ。

 ただし、ひと昔前のように「世界王者=誰もが知る存在」かというと、そうではなくなってきている。そこで、あらためて9人の日本人世界王者を体重別に軽い方から紹介しよう。

期待されるライトフライ級王座統一戦

昨年大みそかはドロー防衛を果たした田口良一。20日、21日の結果次第では、統一戦の機運も高まるだろう 【赤坂直人/スポーツナビ】

 17階級のなかでも最軽量のミニマム級でWBO王座に君臨するのが福原辰弥(27=本田フィットネス)だ。今年2月、生まれ育った熊本でWBOミニマム級暫定王座決定戦に臨み、モイセス・カジェロス(メキシコ)に2対1の12回判定勝ちを収めてベルトを腰に巻いた。その後、正王者の高山勝成が引退したため、福原に晴れて正王者の称号が与えられた。9年前にデビューし、熊本をベースに東京、愛知、沖縄など日本各地を転戦。さらにタイ遠征もこなすなどして地力をつけ、15年には日本ミニマム級王座を獲得。初防衛戦では世界上位ランカーの榮拓海(折尾)を退け、自らの手で世界への道を切り開いた。
 カジェロス戦では左目を大きく腫らしながらも持ち味の粘りを発揮した。14年以降の10試合は日本タイトル戦、世界戦を含めて10戦7勝(4KO)3分と無敗を誇る。サウスポーのボクサーファイター型で、左ストレートから右フック、さらにボディへの返しを得意とする。29戦19勝(7KO)4敗6分。

 ライトフライ級は主要4団体のうち3つのベルトが日本に集まっている。20日にWBC王座に挑む拳四朗が勝ち、さらに田中と八重樫が防衛を果たせば日本人選手が4団体の王座を独占することになる。日本人同士による統一戦の機運が高まることは間違いなさそうだ。

 そのライトフライ級でWBA王座を保持しているのが田口良一(30=ワタナベ)だ。田口は童顔に似合わず強気の攻撃的ボクシングをすることで知られる。13年4月に日本王座を獲得したが、初防衛戦でのちの世界王者、井上尚弥に判定負けを喫して4カ月の在位に終わった。しかし、昇竜の勢いの井上と10回まで渡り合ったことで再評価された。14年12月にはアルベルト・ロッセル(ペルー)から2度のダウンを奪って12回判定勝ち、世界一の座についた。3連続KO防衛後、元王者の宮崎亮(井岡)との日本人対決を制してV4に成功。昨年の大晦日には引き分けで5度目の防衛を果たしている。この階級では168センチと長身だが、体格に頼ることなく積極的に接近戦を仕掛ける好戦派で、耐久力にも優れている。右のボクサーファイター型で、ワンツーやボディ打ちなどを得意としている。29戦25勝(11KO)2敗2分。

 IBF王者の八重樫東はミニマム級から飛び級でフライ級を制覇、そして1階級落としてライトフライ級で戴冠を果たし、3階級で世界一になった。“激闘王”の異名があるように、常にスリリングな戦いをするためファンも多い。プロ7戦目で世界初挑戦したが、このときはアゴを骨折したすえ12回判定負けに終わった。再挑戦まで4年を要したが、28歳でWBAミニマム級王座を獲得。初防衛戦でWBC王者の井岡一翔(井岡)に惜敗、王座統一に失敗したが、株を落とすことはなかった。13年にWBCのフライ級王座を獲得したあとV4戦では世界的な強豪、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)の挑戦も受けた(9回TKO負け)。現在の王座は15年12月に獲得したもので、21日にV3戦を控えている。打撃戦だけでなく、足とスピードを生かした出入りのボクシングもできる。30戦25勝(13KO)5敗。

 WBO王者の田中恒成はスピード出世を果たした俊英だ。日本最速の5戦目で世界王座を獲得し、井上尚弥と並ぶプロ8戦目で2階級制覇を達成。20日に16戦全KO勝ちの挑戦者、アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を相手に初防衛戦を行うことになっている。高校王者になるなどアマチュアを経て13年11月、元世界王者の畑中清詞氏が会長を務める畑中ジムからプロデビュー。4戦目で東洋太平洋ミニマム級王座を獲得し、5戦目でWBOミニマム級王者になった。デビューからわずか1年半だった。初防衛戦では2度のダウンを喫したうえポイントでも相手にリードを許す大苦戦を強いられたが、6回にボディブローで逆転KO勝ちを収めた。この王座は返上してライトフライ級に転向し、昨年の大晦日に現在の王座を獲得した。スピードとテクニック、強打を併せ持った右のボクサーファイター型。8戦全勝(5KO)。

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著者プロフィール

1959年、埼玉県深谷市生まれ。82年にベースボール・マガジン社入社。以来、「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間、同誌編集長を務める。01年にフリーランスになり、WOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。専門サイト「ボクシングモバイル」の編集長も務めている。

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