【ボクシング】階級を超えた“世界最強”は誰か!? PFPランク・トップ10を紹介

杉浦大介

米国「リング」誌が選ぶPFPランキング1位にはアンドレ・ウォードが君臨している 【Getty Images】

 プロボクシング界において、「いったい誰が一番強いのか?」という命題が立てられたときに、1つの指標となるのが「パウンドフォーパウンド」ランキングだ。「パウンドフォーパウンド(PFP)」とは、全階級の選手を体重とは関係なく比較し、その中で最強は誰なのかを決めるランキングとなる。

 今回はボクシング界の中でも権威のある米国「リング」誌が、5月1日付けで発表しているPFPランキングのトップ10選手を紹介する。

1位:アンドレ・ウォード(米国)

WBAライトヘビー級スーパー王者、IBF、WBOライトヘビー級王者
31歳、31戦31勝(15KO)


“全階級を通じてベスト”という評価がウォードに与えられていることに、異論があるファンも多いかもしれない。2013年以降の4年間でこなしたのは5戦のみ。昨年11月19日のセルゲイ・コバレフ(ロシア)戦でも、2回にダウンを奪われた末、3人のジャッジがすべて114−113という薄氷の逆転勝利だった。試合自体はスリルに欠けることが多く、地元オークランド以外にファンは少ない。

 ただ、例え近況は微妙でも、04年アテネ五輪金メダリストのウォードが最高レベルのスキルを持っていることに疑問の余地はない。アマチュア時代を含め、約20年に渡って無敗。自身の距離をつかむのが得意で、ポイントを奪う巧さも天下一品。ミッケル・ケスラー(デンマーク)、カール・フロッチ(イギリス)、アルツール・エイブラハム(ドイツ)といった列強を寄せ付けなかったスーパーミドル級時代の強さは圧巻だった。最新のコバレフ戦でも絶体絶命の危機から立て直し、精神力と適応能力を証明している。

 そんなウォードが勢いを完全に取り戻すために、6月17日に迎えるコバレフとの再戦はキャリアの正念場になる。難敵とのダイレクトリマッチは、今回も緊張感あふれる接戦が濃厚。この一戦をより明白な形で制すれば、一時は揺らいだ評価は再び確かなものになるはずである。

2位:セルゲイ・コバレフ(ロシア)

ウォードとの再戦では真価を証明するはず。勝利すればPFPランクのトップに出る可能性も 【Getty Images】

元WBA、IBF、WBO世界ライトヘビー級スーパー王者
34歳、32戦30勝(26KO)1敗1分


 強豪対決として注目された昨年11月のウォード戦は、コバレフが勝っていたと信じているファン、関係者は依然として多い。判定結果を聞いて、当然のように激怒したロシアの“デストロイヤー”。34歳になったコバレフにとって、6月のウォードとのリマッチが大勝負になることは言うまでもない。

 左右両拳に破格のパワーを秘め、米国進出以降は破格的なKOを量産してきた。単なるパワーパンチャーではなく、着実にプレッシャーをかける冷静さとスキルを兼備。2014年11月に史上最年長王者のバーナード・ホプキンス(米国)を完封したあたりで、コバレフは業界全体のリスペクトを勝ち得た感があった。ただ、ここでもし同じ相手に2連敗を喫するようなことがあれば、商品価値に大打撃は必至。“敵地”と呼べるラスベガスの舞台で、ウォードとの再戦ではよりはっきりした形で決着をつけなければらない。

「ウォードのキャリアを終わらせてやる」――。そう意気込むコバレフが、大一番で改めて底力を披露できれば、7月のPFPランキングでは1位に浮上している可能性は高いはずだ。

3位:ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)

カネロとの大一番を控えるゴロフキン。その試合に勝利し、全国区のスーパースターになれるか 【Getty Images】

WBA世界ミドル級スーパー王者、WBC、IBF世界ミドル級王者
35歳、37戦全勝(33KO)


 フロイド・メイウェザー(米国)、マニー・パッキャオ(フィリピン)時代以降のボクシング界で、最大のセンセーションとなったのがゴロフキンである。今年3月までなんと23連続KO勝利、世界タイトルも17連続KO防衛という驚異の記録を継続。爆発的なパワー、爽やかな笑顔、ユーモラスなコメントが米国のファンの心もつかみ、一服の清涼剤的な存在となったのだった。

 そんなゴロフキンにほぼ唯一欠けていたのは、強敵相手のビッグファイトでの勝利だった。しかし、今年9月16日、当代随一の人気者であるサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)とのミドル級頂上決戦が決まった。この試合こそがゴロフキンのキャリアのハイライト。勝てばついにクロスオーバー(全国区)のスーパースターになることだろう。

 気になるのは、今年3月に行われたWBA世界ミドル級王者ダニエル・ジェイコブス(米国)との最新試合で反応に鈍りが見られたこと。連続KOがストップし、敗北寸前の大苦戦を味わったこの一戦で、35歳になった怪物は衰えを見せたのか(※ジェイコブス戦当時は34歳)。それともまだ最高級の力を残しているのか。全世界が注目する9月のカネロ戦で、その答えは世にさらされるはずである。

1/3ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント