【ボクシング】階級を超えた“世界最強”は誰か!? PFPランク・トップ10を紹介

杉浦大介

7位:ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)

シドニー、アテネ五輪の金メダリストであり、無敗を続けるリゴンドーだが、その存在感は薄くなっている。6月の試合では、もう一度を強さを見せ付けたいところだ 【Getty Images】

WBA世界スーパーバンタム級スーパー王者
36歳、17戦全勝(11KO)


 シドニー、アテネ五輪の金メダリストであり、プロでもスーパーバンタム級のタイトルを統一した“キューバの拳豪”。依然として無敗を保ちながら、米リングでのリゴンドーの存在感は薄くなって久しい。

 歴史的なほどのディフェンス技術を誇り、同時にファンを喜ばせることにはまったく興味がない。この2つは興行の世界で最高のコンビネーションとは言えず、おかげで多くの凡戦を生み出してファンを落胆させてきた。
「まるで難解なパズルのようなボクシング」と、13年のノニト・ドネア(フィリピン)戦後にリングサイドで囁かれたそんな形容は、良くも悪くもリゴンドーのキャリアを象徴している。

 6月17日には暫定王者モイセス・フローレス(メキシコ)と対戦し、WBAタイトルの10度目の防衛を目指す。米国内のテレビ局に敬遠されている現状では、その後のビッグファイト成立も望み薄。技量の高さを考えれば、注目度の低いファイトを年に1、2戦こなすだけの現状は残念としか言いようがない。

8位:サウル・アルバレス(メキシコ)

ゴロフキンとのミドル級頂上対決が決まったカネロ。その実力を示すときがきた 【Getty Images】

WBO世界スーパーウェルター級王者
26歳、51戦49勝(34KO)1敗1分


“過大評価”“人気先行”。オスカー・デラホーヤ(メキシコ系米国人)の系譜を継ぐメキシコのアイドルは、これまでどうしてもそのような批判の声から逃れられなかった。ミゲール・コット(プエルトリコ)、アミール・カーン(イギリス)、エリスランディ・ララ(キューバ)といったビッグネームに勝ってはきたが、契約ウェイトとマッチメークの妙という感も拭い去れない。近況の冴えない母国ライバルを一方的に下した5月6日のフリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ)戦でも、印象は同じだった。

 ただ、慎重なマッチメークに守られながら、カネロが徐々に力をつけていることも無視するべきではない。パワー、ハンドスピード、カウンターの技術は上質で、守備力も向上。年齢的にも全盛期の今では、PFPランキングの1角に名を連ねても遜色(そんしょく)のないボクサーに成長した。

 機は熟したと思えるタイミングで、カネロはキャリア最大の一戦を迎える。9月16日に実現するミドル級統一王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との決戦こそが、2017年最大のビッグイベント。リスキーなファイトだが、上昇機運のカネロを支持する声も増えている。この試合に勝てば、その真価に疑問を呈する声はついに綺麗に消え失せるはずだ。

9位:山中慎介(帝拳)

“神の左”で防衛回数を重ねてきた山中。さらに世界での評価を高めるには、米国進出、他階級王者との戦いも期待されるが…… 【写真は共同】

WBC世界バンタム級王者
34歳、27勝(19KO)2分


 近年は日本人ボクサーが世界的な知名度を得るようになったが、そんな中でも最高級に評価されているのが山中だ。左パンチに一撃必倒の破壊力を持ち、豪快なKOを量産する軽量級離れしたボクシングは海外のマニアにとっても魅力。日本人選手は手数優先の激闘型が多いイメージが米国ファンの中にはあるが、井上尚弥(大橋)とともに、一線を画す存在として山中もリスペクトされている。

 残念なことが1つ。母国以外でも高い評価を受けながら、一時は可能性が噂された米国進出、あるいは世界的な大物とのビッグファイトを実現できていないことだ。まずは具志堅用高氏の持つ日本人王者の最多防衛記録13度が目標というのは理解できるが、その後にはぜひともビッグネームと対戦して欲しいと願わずにはいられない。米国まで来なくとも、例えば1階級上のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)との王者対決が日本ででも実現すれば……。注目試合での勝利をレジュメ(履歴書)に加えれば、山中のPFPランキングの順位もまだ上がるはずである。

10位:井上尚弥(大橋)

21日には5度目の防衛戦が待つ井上。これをクリアすれば軽量級のスター選手との一戦も期待されるはずだ 【写真は共同】

WBO世界スーパーフライ級王者
24歳、12戦全勝(10KO)


 2014年の年末に行われたオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦の鮮烈KOの映像が出回って以降、井上は世界中のファンの注目選手になった。以降、故障もあって、やや停滞している印象があったのは事実。しかし、そんな“モンスター”が次の段階に進むべき時は近づいているのだろう。

 5月21日、リカルド・ロドリゲス(メキシコ)との5度目の防衛戦をクリアすれば、ついに米国進出という話も聞こえてくる。標的にしていたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が敗れたのは返す返すも残念だったが、ゴンサレスはシーサケット・ソールンビサイ(タイ)との再戦での王座復帰の可能性も十分。他にも元WBC世界スーパーフライ級王者カルロス・クアドラス(メキシコ)、元WBA、WBO世界フライ級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)といったスター性のある選手が周辺階級にそろっている。

 前述通り、最近では日本人ボクサーへの評価は高いが、その中でPFP上位に上り詰めるポテンシャルを感じさせるのはやはり井上だけ。今年後半以降、米国を舞台にした軽量級ビッグファイトシリーズを勝ち抜けば、1年後にはトップ3入りも十分に可能なはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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