シーズン序盤の不安を払拭した福島千里 世界を見据え「そろそろ標準目指す」

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タイムには満足せず、改善の余地あり

織田記念では100メートルの予選で途中棄権。不安視されながらの静岡国際出場だった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 ただ、内容に目を向けるとまだまだ課題は多い。記者からタイムについての感想を問われると「もー、びっくりするくらい……」とやや声を上ずらせながら返答。少し呼吸を置いてから「私としては、『遅いな』という感じですけど……。物足りなさはあります」と苦笑し、満足できていない様子だった。

 開会式直後の午前中に行われた予選では、第1組で登場。スタートダッシュも決まり、隣のレーンを走っていた米国人選手にも大きく差をつけた。ラスト50メートルは流す形で組1位。24秒01の記録は、第3組で走った市川華菜(ミズノ)の24秒00に続く、全体2位だった。ただ、市川が追い風0.8メートルだったのに対し、福島は向かい風0.3メートルという条件だったことも考慮すると、やはり予選から福島の走りの方が上回っていたと言える。

「アップでは、今日の全力を出す練習をしました。びっくりしないで、怖がらないで、今持っている力を意識しました」

 予選である程度力を出して走ることができたことで、あとはもう一本、決勝で「怖がらないで」走り切ることができれば福島にとっては及第点であったのだろう。ただ、ラストを流さずに力を入れて走り切る中で、まだまだスピードに乗り切れていない印象を受けた。

 しかし、これは福島に限ったことでもない。同日に行われた男子200メートル決勝で2位に入った飯塚翔太(ミズノ)もこう話している。

「もう少しスピードを上げたい。練習をして、体にもう少し刺激を入れたい。これから暖かくなってくるので、刺激が入れば、今と同じ意識で速く走れると思う」

 この日は夕方にかけてやや気温が下がり、気候的にも体がこわばる要因になった。またシーズン序盤で体に刺激が入り切れていないことも外因となったが、これは今後、練習を積んでいく中で、改善されていく部分でもあるだろう。

「こういう始まり方は初めてではない」

次戦は今月21日のGGP川崎。格上選手との勝負になるが「そろそろ(参加)標準を目指す」と意気込んでいる 【写真は共同】

 この2戦を振り返り福島は「良い意味でも悪い意味でも、こういう(シーズンの)始まり方は初めてではないので、良い意味に捉えて、しっかり続けていきたいと思います」と話す。これも長く女子短距離界のトップとして、良いシーズンと悪いシーズンを繰り返してきた経験からの悟りでもあるだろう。

 その福島の次戦は今月21日に行われるゴールデングランプリ(GGP)川崎の女子100メートルになる。

「(静岡国際を終え)ここで一段落。もう1回、トレーニングを積める時間があるので、しっかりやっていきたい」

 同大会では、リオデジャネイロ五輪の女子走幅跳金メダリストながら、100メートルでも10秒78の自己ベストを持つティアナ・バルトレッタ(米国)や、オセアニア記録となる11秒11を持つメリッサ・ブリーン(オーストラリア)らも出場。福島としては、格上と勝負する中で、自身の持つ自己ベスト(11秒21)に近いタイムを狙いたいところだ。

「(GGP川崎では)そろそろ標準目指して頑張ります」

 そう笑顔で意気込みを語る福島は、すでにその先にある“世界”での戦いを見据えているのだろう。

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

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