バルセロナのCL準決勝進出は夢物語か? マドリー勢と対照的、一時代の終えんも

準決勝進出へアドバンテージを持つマドリー勢

CL準々決勝第1戦、レアル・マドリーはC・ロナウド(左)の2ゴールでバイエルンに勝利 【写真:ロイター/アフロ】

 意外なことに、現時点ではレアル・マドリーがチャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝に勝ち残った8チームの中で、最も準決勝進出の可能性が高い状況にあるように思える。敵地でバイエルンから手にした手堅い勝利(2−1)は、準々決勝ファーストレグの中で最も予想外の結果となった。

 レアル・マドリーの面々にとって旧知の仲であるカルロ・アンチェロッティ率いるバイエルンは、今季ここまで素晴らしいシーズンを送ってきた。それだけにリスクの高い一戦となることが予想されたが、ロス・ブランコス(スペイン語で「白」、レアル・マドリーの愛称)は予測された危険にうまく対処することができた――これまで何度も不利な結果に終わってきたアリアンツ・アレナでの過去を乗り越えようという意図からか、今回は黒色のユニホームを着ていたが――。

 とはいえ、フットボールは試合背景に大きく影響されるものだ。この試合に関しては、バイエルンはFWロベルト・レバンドフスキとDFマッツ・フンメルスの欠場が大きく響いたと言える。とりわけ以前からレアル・マドリーも注目してきたストライカーの不在は大きな痛手で、アンチェロッティが代役に選んだトーマス・ミュラーは彼と同じ役割を果たすことができなかった。

 レアル・マドリーは前半を通して押し込まれ続ける状況を耐えしのがなければならなかったが、バイエルンの攻撃は十分に機能してはいなかった。バイエルンとしてはサンティアゴ・ベルナベウでの第2戦を前にホームでアドバンテージを得ておきたかったが、ポーランド人FW抜きではゴールへの明確な道筋が見えず、前半の終了間際にはアルトゥーロ・ビダルがPKを失敗。その結果、1−0からリードを広げられぬままハーフタイムを迎えることになった。

 そして後半開始から間もない2分、クリスティアーノ・ロナウドが同点ゴールを決めてアリアンツ・アレナを沈黙させた。その後はレアル・マドリーがゲームを落ち着かせ、ボールを動かしながら時間をうまく使い、少なくとも4度のセーブを見せたGKマヌエル・ノイアーを主役に祭り上げた。彼の活躍がなければ、ベルナベウでのセカンドレグを待つまでもなく、ドイツの地で完全に勝負が決まっていたことだろう。

 同じくスペインの首都を本拠地とするアトレティコ・マドリーも、比較的状況をコントロールできる立場にある。ホームのビセンテ・カルデロンで行われたレスター戦は最少得点差(1−0)での勝利にとどまったものの、結果以上の好感触を得ることができたからだ。

 アントワーヌ・グリースマンが前半28分にPKを決めるまでは迷いがあったが、先制後のチームは野心をむき出しにしながら高い集中力を保ち、スピーディーに攻め続けることでライバルに力の差を見せつけた。ホームで無失点に抑えたことも、ディエゴ・シメオネ率いるチームにとってはセカンドレグに向けて重要なアドバンテージとなった。

バルサの準決勝進出は夢物語のようなもの

ユベントスに0−3で敗れたバルセロナ。準決勝進出は夢物語のようなものだ 【Getty Images】

 マドリーの2チームにほほえみを浮かべる理由があるならば、バルセロナは対照的な状況にある。トリノで行われたユベントスとの最悪な一戦の後にルイス・エンリケが認めた通り、この試合の前半は散々な内容に終わった。もし相手が3−0とした後に守りを固めなければ、点差はさらに広がっていたとまで指揮官は認めている。

 ファンの間ではまだ、CL決勝トーナメント1回戦のパリ・サンジェルマン(PSG)戦のような奇跡の逆転劇に向けた希望が残っている。とはいえ、ユベントスがPSGとは異なるチームであることは、誰もが理解していることだ。あれだけ守備が安定し、バルセロナ以上に戦力が充実し、戦術的バリエーションも豊富なライバルに3−0までリードを広げられては、準決勝進出は夢物語のようなものである。

 CLで生じた2度の大敗から見えてくるのは、既に退任の意思を表明している監督だけでなく、多くの選手たちのバルセロナでのサイクルが尽きようとしていることだ。

 スピードが落ちてきたハビエル・マスチェラーノは、もはやセルヒオ・ブスケッツの代役として中盤の底でプレーできる選手ではなくなった。アンドレス・イニエスタも時折タレントの片りんを見せているものの、以前ほど継続的に高いパフォーマンスを維持することができなくなっている。

 バルセロナがピッチの至るところでライバルに圧倒されることなど、数年前までは考えられなかった事態である。だが実際にユベントスは球際の競り合いをことごとく制していた。そしてリオネル・メッシに天才的なラストパスを通された際には、公式戦1000試合出場を達成した守護神ジャンルイジ・ブッフォンが現れた。

 ユベントスのようなトップレベルの強豪に対し、PSG戦のような3バックで戦うことも、良いアイデアではないように思える。ユベントス戦ではジョルディ・アルバが不在の左サイドに生じたスペースをフアン・クアドラードとパウロ・ディバラに突かれていた。左のセンターバックに起用された大柄なジェレミ・マテューは、彼らを止める役割には適していなかった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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