CL準々決勝、スペイン勢の抽選結果は? 4強入りの本命は“常連”のアトレティコ

幸運に恵まれたアトレティコ・マドリー

スペイン勢3チームの中で最も幸運に恵まれたのは間違いなくアトレティコ・マドリーだろう 【写真:ロイター/アフロ】

 チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝の組み合わせ抽選の結果を受け、スペイン勢3チームの中で最も幸運に恵まれたのは間違いなくアトレティコ・マドリーだろう。もちろんプレミアリーグ勢唯一の生き残りとなったレスターも調子を上げているだけに、下馬評の優位は結果で証明する必要がある。

 今やすっかりCLの“常連”となったアトレティコ・マドリーは、これで4年連続のベスト8進出となる(そのうち2度は決勝まで勝ち残っている)。すでにリーガ・エスパニョーラでは優勝の可能性が実質的に消滅し、国王杯でも敗退しているだけに、今季はとりわけヨーロッパでのタイトル獲得に力を注ぐことになるだろう。その点を考慮しても、彼らが4強入りの本命であることは間違いない。

 とはいえレスターを過小評価するわけにはいかない。彼らは昨季、あらゆる障害を乗り越え奇跡を起こしたチームである。昨季のプレミアリーグ制覇を実現したクラウディオ・ラニエリ監督が解任され、アシスタントコーチから昇格したクレイグ・シェイクスピア新監督が後を継いで以降、レスターは失っていた勝者のメンタリティーを取り戻し、国内リーグでも3連勝を果たすなど、良い結果を出し始めている。

 レスターはセビージャを下して8強入りを決めただけでなく、1−2で敗れたファーストレグのビハインドをセカンドレグで覆したことでもわれわれを驚かせた。ラモン・サンチェス・ピスフアン(セビージャのホームスタジアム)で重要なアウェーゴールを決めたジェイミー・バーディーは、ここにきて昨季から今季序盤まで維持してきた本来のパフォーマンスを取り戻しつつある。

 劣勢の状況を覆し、あらゆるライバルを打ち破る力を持つレスターに対し、アトレティコ・マドリーはホームのビセンテ・カルデロンでは攻め勝ち、アウェーではリードを守り切る戦い方を徹底できるスペシャリストである。そんな両者の対戦は、興味深いゲームになるはずだ。

三冠の可能性があるバルセロナとユベントス

決勝Tで歴史に残る逆転劇を実現したバルセロナにとっては、再びカンプノウでセカンドレグを戦えることが大きな強みとなる 【Getty Images】

 バルセロナは2015年大会の決勝でも対戦したユベントスを引き当てた。相手はセリエAを5連覇中で、今季も2位に8ポイントの差を付け、タイトルレースの首位を走っているだけに、くじ運に恵まれたとは言えないだろう。それでも、パリ・サンジェルマンとの決勝トーナメント1回戦で、歴史に残る逆転劇を実現した彼らにとっては、再びカンプノウで勝負を決めるセカンドレグを戦えることが大きな強みとなる。

 このカードにおいては長年ブラウグラナ(カタルーニャ語で青とえんじの意。バルセロナの愛称)の一員としてプレーしたダニエウ・アウベスとバルセロナの初対戦であり、ワールドカップ・ブラジル大会のイタリアvs.ウルグアイで生じた“かみ付き事件”の当事者であるジョルジョ・キエッリーニとルイス・スアレスの再戦といった因縁の対決も、試合を盛り上げるスパイスとなるはずだ。

 他にもピッチの至るところで興味深いマッチアップが見られそうだが、なかでも最も注目を集めるのはアルゼンチン代表の同僚であり、将来的にはバルセロナでもチームメートとなる可能性があるリオネル・メッシとパウロ・ディバラの対戦だ。

 メッシがディバラのことを最も将来性のある選手だと評し、アルゼンチン代表における自身の後継者だと語っていることは特筆に値する点である。また13年までレアル・マドリーに在籍していたゴンサロ・イグアインにとっては、かつての宿敵との再戦という意味合いも持つことになる。

 バルセロナとユベントスはいずれも現時点で3冠獲得の可能性が残っている。バルセロナはリーガで1試合未消化の首位レアル・マドリーと勝ち点2差の2位につけ、ユベントスはセリエAで首位を快走中だ。また、バルセロナは5月27日の国王杯決勝でアラベスと対戦することが決まっており、ユベントスは4月5日にナポリとのコッパ・イタリア準決勝第2戦に臨む。

 よりチームとしてまとまっているのはユベントスだが、バルセロナは単独で局面を打開できる選手を多く擁している。極めてレベルの高い拮抗(きっこう)した両者の対戦は、やはりバルセロナのホームであるカンプノウがセカンドレグの舞台となることが鍵を握っているように思える。

最もレベルの高いチーム同士の対戦が実現

今季限りでの引退を表明したシャビ・アロンソ(右)はかつてレアル・マドリーでもプレーした 【Getty Images】

 レアル・マドリーvs.バイエルン・ミュンヘンは最もレベルの高いチーム同士の対戦となる。現ヨーロッパ王者である前者に対し、後者は現時点でヨーロッパ、ひいては世界で最も優れたチームだと私は見ている。

 レアル・マドリーは美しいフットボールで見る者を満足させるようなチームではない。だが、左サイドバックのマルセロを含めた攻撃陣は恐るべき破壊力を有しているため、ゲームを支配する必要もなく、ワンプレーに集中力を注ぐことで、相手ゴールを陥れることができる。

 バイエルンはジョセップ・グアルディオラが率いた3シーズンと変わらぬ穴のないチームであるが、カルロ・アンチェロッティが就任した今季はアリエン・ロッベンやロベルト・レバンドフスキ、シャビ・アロンソといった選手たちが生き生きとプレーするようになっている。今季限りで引退することを発表したアロンソにとって、今回の対戦は長年プレーしたサンティアゴ・ベルナベウ(レアル・マドリーのホームスタジアム)のファンに別れを告げる機会にもなる。

 やはり極めて拮抗した戦いになることが予想されるこの試合は、ディテールに勝敗が左右される可能性が高い。ただ、セカンドレグがサンティアゴ・ベルナベウで行われるという点を考慮すれば、レアル・マドリーに若干のアドバンテージがあると言えるかもしれない。

 スペインフットボール界にとっての朗報は、5年連続で3チームが準々決勝に勝ち残ったことだ。それは他のどの国のリーグも成し得ていない、誇るべきことである。

(翻訳:工藤拓)
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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