「もう一度世界で戦う自分を見てほしい」 好調な滑り出しとなった入江陵介の再出発

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「この舞台に帰ってこられてうれしい」

 世界水泳(7月14日開幕、ハンガリー・ブダペスト)の代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権2日目が14日、愛知・日本ガイシアリーナで行われ、男子100メートル背泳ぎでは入江陵介(イトマン東進)が53秒46のタイムで優勝した。同種目での4連覇を達成するとともに、世界水泳の代表にも内定した。

「この舞台に帰ってこられてうれしい」。100メートル平泳ぎで4連覇を達成した入江の胸にはさまざまな思いが去来しているようだった 【奥井隆史】

「この舞台にまた帰ってこられて、優勝することができて本当にうれしく思います」

 さまざまな思いが去来したのだろう。27歳の入江は、表彰台の中央に立ちながら満面の笑みを浮かべていた。

 好調ぶりは午前の予選にも表れていた。前半の50メートルを25秒台でターンして、53秒73の全体1位突破。「予選に出た選手は、きっとみんな僕がどんなタイムを出すのか気にしていたと思う。ここで一発かましてやろうと思っていたので、まあまあかな」と、余力を残していることを明かしていた。

 しかし、決勝では予選からさほどタイムが伸びず、2位と0秒34差での優勝。

「予選の感覚がすごく良かったので、いい線を狙いたいという気持ちで臨みましたが、久しぶりの国内の試合ということ、選考というプレッシャーもあって、決勝は泳ぎが本当に良くなかったです」

 悔しさをにじませた入江だが、昨夏のリオデジャネイロ五輪後には引退を考えていたほどである。再起戦としてはまずまずの出来と言えるだろう。

拠点を米国に移し環境が激変

米国に拠点を移し、トップ選手と練習を重ねる中で、自然と再び世界を目指す気持ちになったという 【奥井隆史】

 メダルも期待されていたリオ五輪では表彰台に立つことができず、「自分自身やり切った思いだった」と振り返る入江は、五輪直後に3カ月の充電期間を過ごしたという。一時はテレビで五輪の映像が流れると「目をそむけたくなる」ほど競泳を避けていたそうだが、時間がたつにつれて「物足りない」という気持ちが芽生えてきた。「もう少し気持ち良く終わりたいと思った。ロンドン五輪で表彰台に3回上らせてもらい、あの景色は鮮明に覚えている。その経験が自分を引き止めた」と現役続行を決意した。

 入江が再出発の地に選んだのは米国だった。

「ガラッと環境を変えて、もう一度チャレンジしてみようという気持ちになった」

 1月から拠点としたのは世界中からエリート選手が集まるチーム「スイムマック」。NCAA(全米大学体育協会)の常勝チーム、アーバン大の元ヘッドコーチであり、リオ五輪では米国女子代表のヘッドコーチも務めたデビッド・マーシュが指揮を執る名門である。これまでマンツーマンで指導を受けてきた入江にとっては、まさに環境が激変した。

「大人数のチームに入り、盛り上げながらできる環境は初めて。練習の種類がすごく多いし、泳ぎを細かく注意されたりするけれど、とにかく明るくてマイナスなことはあまり言われない。しっかりと土台作りをしたかったので、良い感じでできていると思います」

 環境の変化は相乗効果も生み出した。3月にサンディエゴで合同合宿を行うと、ネイサン・エイドリアンやマット・グレバーズ、アンソニー・アービンら米国代表選手たちも参加していた。トップクラスの選手たちとトレーニングを重ねる中で、彼らから「世界水泳に出るのか?」と声をかけられた入江は、「もう一度この選手たちと一緒に泳ぎたいと思った。自然と世界水泳に出る気持ちにさせてもらえた」と明かす。

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