小関と渡辺、互いを高め合うライバル関係 平泳ぎで世界を見据える2人の競争心

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男子100メートル平泳ぎを制したのは小関(右)。渡辺(左)は2位だった 【奥井隆史】

 世界水泳(7月14日開幕、ハンガリー・ブダペスト)の代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権が13日、日本ガイシアリーナで開幕し、男子100メートル平泳ぎでは25歳の小関也朱篤(ミキハウス)が59秒26のタイムで優勝した。同種目の4連覇を飾ると同時に、派遣標準記録もクリアし、世界水泳の代表に内定。一方、1月に200メートル平泳ぎで世界記録を更新した20歳の渡辺一平(早稲田大)は1分00秒11の2位に終わった。目標としていた自己ベスト(59秒99)には届かず、この種目での内定を得られなかった。

刺激となった渡辺の世界新記録

「あくまでも自己ベストを狙いたい」(小関)
「(小関を)見ながら泳いでいた」(渡辺)

 実に対照的なコメントだ。日本の男子平泳ぎでトップを争う両者だが、100メートル平泳ぎでは小関に軍配が上がった。小関は、五輪の平泳ぎで2大会連続2冠を達成した北島康介の泳法を大学時代に学び、日本代表入りを果たした2013年の東アジア競技大会で金メダルを獲得。その後、14年の日本選手権では100メートル平泳ぎで北島らを破り初優勝を飾るなど、近年の日本の平泳ぎをけん引してきた存在である。

 しかし、世界大会でのメダル獲得にはまだ届かずにいる。国内やアジアの大会では金メダルを積み重ねてきたが、15年の世界水泳、昨年のリオデジャネイロ五輪など世界を舞台にした戦いになると、5位の壁を超えることができていない。世界大会でのメダル獲得は積年の思いとなりつつあった。

 そんな中、小関の闘争心に火をつける出来事が起こった。1月の東京都選手権で5歳下の渡辺が200メートル平泳ぎの世界記録を更新したのだ。15年の世界水泳前には「世界新で金」と熱い思いを語っていただけに、普段クールな小関もこの時ばかりは思うところがあったのかもしれない。実際、100メートルでの優勝後にはこう語っていた。

「大きな出来事は一平君の世界記録を見たときですね。すごいなと思ったし、まだ大学3年生という歳なので。僕も負けていられないなと思ったし、そう思わせてくれた彼に感謝です。彼の笑顔のように『辛い時こそ笑顔で』というのを東京五輪に向けて心掛けたい」

小関の背中をひたむきに追い続ける

2人が記録を追い求めながら切磋琢磨していけば、自然とレベルアップしていくはず。200メートル平泳ぎではどのような結末が待っているか 【奥井隆史】

 一方、渡辺は世界記録を更新した後も、小関の背中をひたむきに追い続けている。13日の午前に行われた予選後も「スタートやターンで(小関に)離されていたので、そこはビデオでどこが違うのかを見直したい」と話すと、決勝後も「レースを(ビデオで)見返して、小関さんとの違いを見つめ直したい」と小関の泳ぎを評価していた。

 決勝での自己ベスト更新を狙い失敗した渡辺だが、敗因は明確になったようだ。「前半(の50メートルを)を27秒で入りたいと思い過ぎて泳ぎが硬くなってしまった。その硬さもあって、ラストで(スタミナが)もたなかった」と分析。さらには「出し惜しみをしたくなかったので、そういう意味では良かったけれど、やはり自己ベストが出ていないので悔しい。ただ、50メートルのタイムは良くなっているので手応えはあります」と、全体的にはレースをポジティブに捉えていた。

 100メートルでこそ小関に後れをとったが、世界記録を更新した200メートルではさらなるパワーアップを目指している。泳速に自信を持つ渡辺は、今大会の直前合宿で課題となっていた前半の泳ぎ、すなわち100メートルの泳ぎを重点的に練習した。「100メートルの自己ベスト更新が200につながると考え、メキシコの高地合宿で練習してきました。あと、最後の50メートルで粘れるように、乳酸に耐えるような練習もして本当にきつかったです」と過酷な合宿を振り返る。本人の中ではあくまでも200メートルを見据えた上での100メートル、という位置付けになっているようだ。そして、最後に残りの種目へと気持ちを切り替えた。

「2個メ(200メートル個人メドレー)でも自己ベストを狙っていきたいですし、100から200に備えるのは得意だと思っています。100を中心に練習してきたからこそ不安要素はたくさんありますが、しっかりと自分を見つめ直して戦っていきたい」

 かつての「先輩・後輩」から「ライバル」関係へと変化した小関と渡辺。お互いがプライドを懸けて、記録を追い求めながら切磋琢磨(たくま)し合っていくことができれば、日本の男子平泳ぎは自然とレベルアップしていくはずだ。

(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)
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