10連覇・内村航平を見上げる白井健三 「届きそうで届かない」王者の背中
白井(左)はあと一歩まで迫りながら、内村(右)に届かなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
2位は内村に0・050差と迫る86・300点を出した田中佑典(コナミスポーツクラブ)。そして3位には、内村と0・250差の86・100点をマークした白井健三(日体大)が入った。白井は2位だった昨年に続き、2年連続で表彰台に上がった。
会場に漂った“世代交代ムード”
平行棒では、内村を上回る得点をマーク。白井は5種目め終了時点でトップに立っていた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「今までの『ゆかと跳馬のスペシャリストだけど個人総合ができる選手』という見られ方ではなく、『個人総合をゆかと跳馬で組み立てている選手』という扱いをされたいと思っていた。今回、それを見せることができたのが良かった。3位という順位ではあるけど、内容を見ると去年より達成感はあった」
予選3位で迎えた決勝の演技。白井は最初の種目となったゆかで、自らの名のつくH難度の「シライ3(伸身リ・ジョンソン=後方伸身2回宙返り3回ひねり)」と続く「リ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)」を最少のミスでまとめると、最後は「シライ・グエン(後方宙返り4回ひねり)」を決めて15・600点をマーク。予定通りの“超高得点”でロケットスタートを切った。
苦手のあん馬(13・500点)とつり輪(13・300点)で耐えながら、ゆかの貯金を生かして上位にとどまると、4種目めの得意の跳馬では完成度の高い「シライ・キムヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)」で14・850点をマークした。
5種目めは「自分の中では跳馬よりも得意な種目だと思っている」と話す平行棒。倒立技、腕支持技をよどみのない流れで決め、最後の前方抱え込み2回宙返りひねり下りを止めて14・700点。この種目で14・450点だった内村を上回る点を出し、会心のガッツポーズを見せた。
5種目を終えた時点での得点は71・950点。同い年の谷川航(順大)と並んで首位に立った。3位の内村との差は0・050点とわずかではあったが、世代交代の瞬間がとうとうやってくるのかというムードが漂った。
本調子ではない王者の執念
最終種目の鉄棒で執念を見せた内村。逆転で10連覇を飾った 【写真:アフロスポーツ】
内村の後の演技となった白井は、鉄棒をあまり得意としていないうえに、一か八かを狙って急きょ大技を入れるという選択肢を今回は持っていなかった。白井も無難な演技でまとめ、14・150点。総合3位でフィニッシュし、表彰式では2位の田中を交え、3人で笑顔を見せていた。
10連覇を果たした内村は、試合後、5種目めを終えて3位にいたときの心境を、同じく最後の鉄棒で逆転して金メダルを獲得したリオ五輪個人総合決勝を思い出しながら、このように語った。
「リオと同じような気持ちでやりたかったけど、それよりも今回は疲労が勝ってしまい、リオのときのような“ヒリつき”を再現することができなかった。今までで一番悪いくらいの鉄棒の演技になってしまい、途中で笑いそうなくらいでした」