チームの真の実力を表すデータが存在!?
アナリスト視点でBリーグを見よう(1)

 全60試合のリーグ戦も佳境に入り、Bリーグチャンピオンシップ(CS)までいよいよあと2カ月を切った。スポーツナビではBリーグ初代王者が決まるCSに向けて、大会ナビゲーターに就任したバスケットボール解説者・NBAアナリストの佐々木クリス氏協力のもと、プレーデータを活用したCSの楽しみ方を連載形式でご紹介する。


 本記事で扱うデータは、Bリーグが競技力向上のためにB1に導入したバスケットボール専用の分析ツール「Synergy」の数値を元にしている。イメージや評論だけではなく、「数字」を介してこそ見えてくることがあるのも事実だ。Bリーグ初年度のクライマックスを、データとともに楽しんでいただきたい。

NBAでは「10」を超えるとファイナル制覇の指標

真の実力を表す「NETレーティング」の順位表ではA東京が1位に輝く
真の実力を表す「NETレーティング」の順位表ではA東京が1位に輝く【(C)B.LEAGUE】

 みなさん、こんにちは! 大会ナビゲーターの佐々木クリスです。


 さて、B1では東地区から栃木ブレックス、アルバルク東京がCS出場決定、中地区、西地区ではそれぞれ川崎ブレイブサンダースとシーホース三河が地区優勝をすでに決めてCSの枠は確実。今後、シーズンの焦点は中地区、西地区の2位争い、そしてワイルドカード争いに。そして当然、残留圏内にとどまろうとするチームの生き残りを懸けたプライドのぶつかり合いも見逃せません。


 ナビゲーターとしての僕の強みは、分かりやすくバスケットボールを観戦するための「共通言語」として数字やデータを活用することです。数字は観戦時の印象や考察の裏付けになるばかりでなく、今まで光の当たらなかった事象まで照ら出す強力なツールにもなります。数字が全てではありませんが、少しでも多くの視点を皆さんに提供し、好奇心を駆り立てていければと思っています。初めてのコラムでは、試合数も残りわずかとなったリーグ戦の傾向から、B1に所属する18チームの“真の実力”を検証したと思います。


 真の実力を表す数字、それは「NETレーティング」です。NETレーティングとは、比較するチーム同士の攻撃回数を均等にした同一条件下の平均得点、平均失点の差異=得失点差と覚えていただいていいでしょう。アナリスト界隈では通常、攻撃権は100回で統一されています。この数字を導きだすことで、チームがリーグの中で相対的にどのような力を持っているのかが見えてきます。


 NBAの場合、10を超えてくるとファイナル制覇がかなり現実的になります。昨年は82試合あるレギュラーシーズン中に73勝を挙げたゴールデンステイト・ウォリアーズがNBA記録を更新しました。その前の記録である72勝を達成していた「かのマイケル・ジョーダン率いる1995−96シーズンのシカゴ・ブルズとどちらが史上最高のチームなのか?」という議論が活発になされましたが、昨季のウォリアーズのNETレーティングは11.6。72勝ブルズは12.3とわずかながらブルズが上回りました。時空を超えた対比にロマンを膨らますファンも多かったことでしょう。

チームの力を計る上で重要な指標「得点効率」

チャンピオンシップの大会ナビゲーターに就任した佐々木クリス氏(左)が、データを活用したBリーグの楽しみ方を解説
チャンピオンシップの大会ナビゲーターに就任した佐々木クリス氏(左)が、データを活用したBリーグの楽しみ方を解説【スポーツナビ】

 さて、普段みなさんがチーム力を比較する上で参考にしている指標やスタッツは何でしょうか?


 一番身近なものは平均得点と平均失点の2つになると思います。この2つは攻撃力、守備力の指標として紹介されることが多いですが、バスケットボール分析の最先端では、チームの力を計るためのデータとしては不完全であるという考え方が浸透しています。


 ここでぜひ一緒に考えていただきたいのは、40分間の試合のうちにマイボールにしてからシュートやターンオーバーなどのミスで終わる攻撃の回数が70回のスローペースで戦うチームと、早い展開を好んで90回の攻撃権を使うチームが共に平均100点を挙げるチームだとすれば、どちらのチームがより得点することに長けているだろうかということです。


 恐らく70回の攻撃権で100得点を生み出すチームの方が、効率よく攻めているとの結論にいき着くはずです。70回の攻撃で平均100得点を挙げるチームは1回の攻撃あたり1.43点生む力を有し、90回の攻撃で平均100得点のチームは1.11点です。1試合の平均得点では同等の攻撃力と解釈されかねない両チームの攻撃力には、大きな開きがあることが分かっていただけたと思います。


「大きな開き」と表現したのには理由があります。バスケットボールという競技においては2Pシュートならば、2回に1回入る、3Pシュートならば3回に1回入る1.00が理想です。ですから先ほどの例では両チーム共に攻撃的と分類できる上、1回の攻撃における力の差は1.43−1.11=0.33。共に守備は完全に互角と考えた場合、40分の試合でBリーグの平均に近い80回攻めると、0.33×80=26.4得点分の攻撃力の差となるのです。この得点を挙げる上での効率性は、今や狙うべきシュートの質=シュート・セレクションを語る上で欠かせない要素となっていることをぜひ覚えておいてください。これが「得点効率」、または「得点の期待値」という概念になります。

佐々木クリス

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