イタリア戦でオランダに少し戻った“色気” W杯出場が遠のき、ブリント監督は解任

中田徹

17歳のデ・リフトは代表デビューを果たしたが……

17歳のデ・リフト(右)は苦いオランダ代表デビューとなってしまった 【Getty Images】

 ブルガリア代表のペートル・フブチェフ監督は、今予選で初めてスパス・デレフをストライカーに抜てき。169センチの小柄ですばしっこいデレフは、オランダのDFとGKのイェルーン・ズートにプレスを掛け続けた。また、チームメートもしっかり後ろから押し上げ、オランダに苦し紛れのパスを蹴らせてボールを回収し続ける時間帯を作った。しかもデレフは2ゴールを奪ってゴールゲッターの役目も遂行し、ヒーローになったのだ。

 オランダは結局、デ・リフトを先発させたが、さすがに17歳の少年がW杯予選でCBを務めるのは酷というもの。開始5分にロングボールの処理を誤って、デレフに先にボールに触られてゴールを許してしまった。また、20分の失点もデレフのミドルシュートにデ・リフトは寄せ切れなかった。3月16日のヨーロッパリーグ決勝トーナメント2回戦のコペンハーゲン戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたデ・リフトだが、ブルガリア戦では前半いっぱいでベンチに退いた。彼にとっては苦いオランダ代表デビューとなってしまったが、その責任はブリント監督にある。

 ブルガリアは前半を2−0で終わらせたことで、しっかり勝負の行方も決めていた。後半開始からブリント監督はCBをデ・リフトからフートへ、MFワイナルドゥムからスナイデルへ代えたが、わずかばかり内容がよくなっただけ。前述の通り69分からロングボール作戦に切り替えたが、これも功を奏さなかった。

 実はオランダは、昨年11月に行われた敵地でのルクセンブルク戦でも苦戦したが、途中出場のメンフィス・デパイが2ゴールを決めてスーパーサブの役割を果たし、チームを3−1の勝利に導いた。しかし、ブルガリア戦ではデ・リフトの交代を余儀なくされたため、メンフィスの出番は訪れなかった。エースであるロッベンのブレーキも痛かった。

4位に落ちてW杯本大会が遠ざかる

イタリア戦も1−2で敗れたが、オランダのサッカーには“色気”が少し戻っていた 【Getty Images】

 ブルガリア戦のふがいない内容での敗戦。そして2位から4位に落ちてW杯本大会が遠ざかってしまったことから、ブリント監督の解任は避けられない事態になった。試合翌日の26日、KNVBはブリント監督の解任を発表した。1年半余りで7勝3分け7敗という成績だった。

 28日に行われたイタリアとの親善試合を見るため、4万6000人を超すファンがアムステルダム・アレーナに集まった。ロッベンはバイエルン・ミュンヘンとKNVBの取り決めによって出場しなかったが、それでもフレッド・フリム暫定監督率いるオランダは、どこか吹っ切れたように伸び伸びとプレーしていた。ブルガリア戦と全く同じ3人で組んだMFのうち、ストロートマンはボールをさばき切れず、後半開始からトニー・ビレーナにポジションを明け渡したが、ワイナルドゥムとクラーセンは相手陣内で攻撃に絡む回数が増えていた。

 3トップは右からイェレマイン・レンス、メンフィス、プロメスという小回りの効く俊足の選手をそろえ、頻繁にポジションチェンジを繰り返しながら局面を打開しようとした。

 結局、この試合は1−2で敗れてしまった。チャンスを作った回数そのものは少なかったし、DFはやはり大きな穴が空いていた。それでも、ブルガリア戦と比べて、オランダのサッカーには“色気”が少し戻っていた。

「そこでヒールパスをするか」
「そこで、しっかりつないでくるか」
「ここでキックフェイントをするのかよ」
「おいおい、1人で一気に3人抜いちゃったよ」
「パスを受けるのにバックステップを踏みながら、スペースと次のプレーの角度を作ったのか……」
「終盤出場のスナイデルが怒りながら鋭いシュートを2本も蹴ったよ」

 そんな“色気”である。
 1−2で試合が膠着(こうちゃく)していた75分ごろだろうか、子どもたちが声をそろえて「ホーラント! ホーラント!」と応援し始めた時、私はやや目が潤んでしまった。試合が終わる前に帰ってしまった観客もたくさんいたが、最後まで残ったファンは選手たちに拍手を送っていた。

 だが、記者室に戻ると、オランダ人記者たちは「最低の試合だった」「もう、恥ずかしくて仕方がない」「(W杯予選で首位の)日本がうらやましい」と語っていた。

 拍手を送ったファンと、毒気づく記者たち。そのどちらの気持ちも分かるような気がした。

 新監督探しの話題は、また追って書くことにしよう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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