飛躍する男子テニスのホープ、西岡良仁 体格の不利、焦りの日々を乗り越えて
“ラッキー”から始まった快進撃
21歳の西岡良仁がマスターズ1000大会でベスト16。期待が高まる戦いぶりを見せている 【写真は共同】
この大会に予選から参戦していた彼は決勝で敗れるも、欠場者が出たため繰り上がりで本戦の切符を手にする。しかも本戦の初戦で当たるのは、数奇なドローの巡り合わせで、今しがた予選決勝で敗れたばかりの相手。
「リベンジのチャンスだ。ぜってーやってやる!」
170センチの小柄な身体に詰め込んだ反骨精神が、21歳の西岡良仁(ミキハウス)を駆り立てていた。
思えば彼のキャリア最初の転換期にも、思わぬ幸運の助けがあった。錦織圭(日清食品)を輩出したことでも有名な“盛田正明テニスファンド”の支援を得るべく、西岡も14歳の時に選考会を受けている。しかしその時は2回連続で落選。失意の中に居た彼は、IMGアカデミーのコーチを日本に招いての練習会が行われると聞いても、「アメリカに行けないなら意味はない」と参加する気はなかった。それでも周囲の勧めもありしぶしぶ向かうと、そこで急きょ、盛田ファンドの選考会が行われた。本来なら無かったはずの三度目のチャンスをモノにして、彼はアメリカへの切符を手にする。実際に渡米したのは、選考会からわずか数カ月のことだった。
渡米後のけが 焦る思いが募る日々
「もう上に行くのは難しいのかな……」
将来への不安が胸をふさいだ。
「一度、帰るか? 日本で親と一緒にけがを治すのもありだぞ」
アカデミーのスタッフに、そう持ちかけられたのはこの頃だ。しかし彼は「帰らない」と自分で決める。
帰ったら、確かにリラックスはできるだろう。ただリハビリをするなら、IMGアカデミーの方が、良い環境なのは分かっている。日本に帰れば、どうしても甘えてしまうだろう自分がいて、彼はそれが「嫌」だった。
「縛られた中でやっていく方が、自分には良いかな」
そんな思いが、彼をフロリダにつなぎとめる。それにアカデミーには、最高位2位のトミー・ハース(ドイツ)や、既にツアー優勝の実績も持つ錦織圭がいた。彼らトッププロの存在を身近に感じ、時に練習できる環境も、「強くなるためにきた」彼にはやはり魅力的だった。