飛躍する男子テニスのホープ、西岡良仁 体格の不利、焦りの日々を乗り越えて
父から授けられた力
14歳での渡米後、けがに苦しみ、結果を求めて焦る日々も経験した 【Getty Images】
そんな彼に「あなたの武器は何か?」と尋ねれば、「ミスが少ないこと」との答えが即返ってくる。今回のBNPパリバ・オープン2回戦で、2メートル11センチのイボ・カロビッチ(クロアチア)との“ツアー最大身長差対決”を制した時にも、彼は「僕、速いですし、ミス少ないし、左利きというアドバンテージもある」と自身の武器を明言した。快足を飛ばし、相手が放つボールの下に潜り込むように滑り入ると、跳び上がりながら下から擦り上げるようにして、鋭いスピンをボールに掛ける――。自らはミスをせず、左腕特有の回転を掛けたショットで相手のミスを誘うのが、西岡良仁のテニス。そのような彼のプレースタイルは、テニススクールを経営する父に授けられたものでもある。
「僕の体格のこともあり、お父さんからも、粘って粘ってミスをしないという方向に12歳の頃から導いてもらった。それがまず、ベースにあると思います」
プロに転向したばかりの18歳の頃、彼は自身のテニスの起源をそう語った。その真価を発揮しカロビッチを破った日は、父親の誕生日。最高の誕生日プレゼントに、父親も喜んでいたという。
世界3位に善戦も「正直、悔しい」
4回戦のワウリンカ戦。力は尽くしたが、世界3位の力も実感した 【Getty Images】
「最後の最後で、相手はミスなくしっかりコースに打ち切ってきた。最後はやっぱり、トップの力を見せられたかなと思います」
敗戦の事実を冷静に受け止め、敗因を明確に分析しつつも……彼はフッと、口元からこぼす苦いため息とともに言った。
「やっぱ惜しかったですよね……正直、悔しいです。チャンスはあったので悔しいし『予選2試合を戦っていなければもしかして』という気持ちもあります。でも、それも自分の実力の範囲。悔しいですが、今日は自分の力を全部出し切ったと思うので、悔いもない」
一度は予選で敗れながらも、巡ってきた幸運をつかんで離さなかった西岡は、約1週間で6試合戦い、敗戦の中からも掛け替えのない経験を積んだ今大会を、こう振り返った。
「今後再戦したり、他のトップの選手と戦うことになっても今日の試合は自信になるし、今後につながる」。だから……と、彼は続ける。
「今、自信がたくさんついてきている。いろんな可能性が見えてきたのではと思います」