マイケル・チャンが名コーチたるゆえん 杉山愛コラム「愛’s EYE」
とても熱いものを持っている
錦織圭を指導するマイケル・チャンコーチ。現役時代から熱いものを持っており、頭を使ったテニスを展開している 【写真提供:WOWOW】
コーチとして圭について4年目に入りましたが、圭のテニスが良くなっているのは間違いありません。彼の良さを理解したうえで、足りないところをしっかり見極め、追求していく作業を続けているからでしょう。
言葉にすれば、たやすいことのようにも聞こえますが、それを続けるのは容易ではないと思います。最初のうちは選手の足りないところが目につきやすいので、そこを直し、補うことで選手は向上します。そうして2014年の圭の飛躍がありました。ところが、そうした修正がある程度ひと段落してしまうと、そこからさらに伸び続けるのは、実は選手にとってもコーチにとっても簡単ではないのです。
選手目線で言えば、マンネリ化と言うと言葉が悪いのですが、同じことを言われ続けると、どうしても耳にたこができてしまいます。素晴らしいコーチであると分かっていても、最初の頃の真剣さに比べると、どうしても焦点のぼやける部分が出てきます。そこを乗り越え、アドバイスをどう聞き入れるかが選手側の課題になります。
研究熱心で勝利に執着する
研究熱心であり、勝利にも執着する。錦織との師弟関係は4年目を迎えるが、お互いの信頼は揺るがない 【写真提供:WOWOW】
16年のオフに話を聞く機会があったのですが、その時もマイケルは「圭には新しいシーズンまでにいくつか直さなくてはならないところがあるので、徹底的にやる」とおっしゃっていました。彼の熱い思いが、インタビューでも感じられました。その熱さがあるからこその、圭の活躍なのだと思います。そして、そこがマイケルが名コーチと言われるゆえんなのだと思います。
最初に圭のコーチになるときも、マイケルの思いが一つの出発点になりました。全仏で圭のプレーを見たマイケルは「こんなものではない、もっとできるのに」と一種のいらだちを覚えたようです。それに彼の奥さんのアンバーが気づき、「もしかしたら、マイケルはコーチとして圭を見たいと思っているのかもしれない」と感じ取って、圭の陣営とメールアドレスを交換したと聞いています。
そういった熱い思いと、マイケル自身、圭のテニスに魅力を感じたことから、二人の関係が始まりました。また、両者がそれぞれ人間性の部分でも相手に魅力を感じ、本当の信頼関係が生まれたからこそ、二人はスタートしたのです。
マイケルは研究熱心なコーチでもあります。昨年の全米オープンでも、次の対戦相手の動画を見せてほしいと言ってWOWOWのコンパウンドにやって来ました。雨の中断の際にも来て、映像で確認の作業をしていました。それくらい勝利に執着するコーチです。
執着心と言えば、優勝した1989年の全仏4回戦のイワン・レンドル戦で見せた、あのアンダーハンドサーブが彼の勝利へのどん欲さを物語っています。あれこそ彼をあらわすショットであり、あれができるのがマイケルという人物なのです。
★「マイケル・チャンのテニス塾」
マイケル・チャンのテニス塾が開講。全仏オープン優勝、元世界ランキング2位にして錦織圭のコーチを務めるチャンが、テニスの神髄をレクチャーする。
【放送日】3月18日(土)午前11:00〜スタート(全8回)[WOWOWライブ] ※第1回無料放送
★「WOWOWテニスデー」
WOWOWテニスの祭典を3月、4月の2カ月連続で開催!テニス界のヒーロー錦織圭の話題やテニス座談会などテニス尽くしの特別番組を生放送でお届けする。
・「APRIL 〜錦織圭・大坂なおみ いざ勝負の全仏へ! 語り尽くせ5時間SP〜」
【放送日】4月15日(土)午後0:30〜[WOWOWライブ]
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