危機感を覚えるマラソン男子代表選考 一歩リードは川内と井上 残り1枠は?

中尾義理

不発のびわ湖に瀬古リーダー「今日のレースは“喝”」

5日のびわ湖毎日マラソン、日本人トップとなる4位に入った佐々木悟だが、2時間10分を切れず悔しい表情を見せる 【写真は共同】

 3月5日に行われたびわ湖毎日マラソンで、今夏のロンドン世界選手権の男子マラソン日本代表選手選考会は指定の4大会を終えた。

 男子の選考レースを振り返ると、16年12月の福岡国際では、“最強の市民ランナー”こと、川内優輝(埼玉県庁)が2時間09分11秒で日本人トップの3位。17年2月の別府大分では12年ロンドン五輪6位入賞の中本健太郎(安川電機)が2時間09分32秒で優勝。同月の東京マラソンでは井上大仁(MHPS)が2時間08分22秒で日本人トップの8位に入り、2時間09分12秒の山本浩之(コニカミノルタ)、2時間09分27秒の設楽悠太(Honda)、2時間09分46秒の服部勇馬(トヨタ自動車)まで、4選手がサブテンをマークした。

 最後に行われたびわ湖では日本代表経験のある30代の3人が日本人1〜3位を占めた。とはいえ、日本人トップの佐々木悟(旭化成)のタイムは2時間10分10秒。記録だけの比較では見劣りしてしまう。本人も「まったく話にならない」と笑顔はない。

 さらに新星候補として注目された、箱根駅伝3連覇の青山学院大のエース一色恭志(4年)、トラック1万メートルで27分台のスピードを持つ宮脇千博(トヨタ自動車)と村澤明伸(日清食品グループ)が不発。一色は30キロすぎに途中棄権、宮脇は2時間16分51秒で25位、村澤は35.4キロで日本人トップから陥落後、急激に失速して2時間17分51秒で28位にとどまった。

 びわ湖のレース後の会見で、日本陸上競技連盟長距離・マラソン強化戦略プロジェクトの瀬古利彦リーダーは嘆きともいらだちとも取れる口調で次のようにコメントした。

「コンディションとしてよかった。2時間8分台、7分台が出るんじゃないかと思っていた。少なくとも2時間10分かかるコンディションではない。なのに“何で?”と選手たちに聞いてみたい。前半は期待を持てたが、後半は息切れ。8分台が2人くらい出ると期待していたからショックです。東京マラソンでいい流れができたので、それを切りたくないなと思っていましたが、残念です。今日のレースは“喝”ですね」

 腹痛に見舞われ、中間点過ぎから一時失速した佐々木は「あれくらい言われて当然です」と瀬古リーダーの叱咤(しった)を受け止めた。

井上と川内が一歩リード 残り1枠は山本か中本か

代表選考では福岡日本人トップの川内(写真左)と東京日本人トップの井上が一歩リードか 【写真は共同】

 気になる選考では、誰が、どのくらい優勢なのか。

 瀬古リーダーは「川内選手はペースメーカーが予定より早くやめてしまったが、自分から外国勢の前に出た。ファンに感動を与えた」と言い、中本に関しては「優勝は競技の基本。この場ではまだ決定とは言えませんが、有力ではある」と評価する。

 また、若手の活躍が光った東京について、「井上選手は選考レース唯一の8分台。代表は固いかなと思います」と言い切り、初マラソンながら2時間03分台ペースで中間点を通過した設楽に対して「なかなかできない走り。マラソンのセンスは高い。将来、日本記録を更新できる素材」と絶賛しつつも、単純なタイム比較では4番手であり、5番手の中本には優勝というアドバンテージもある。期待値だけで代表に選ばれるには相当の納得材料が必要だろう。

 となると、井上、川内が2枠を占め、残り1枠が山本と中本の比較になるというパターンが現実的だ。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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