四大陸は「五輪をプレ体感」する時間 平昌へ、羽生ら日本勢は何をつかむか

平昌五輪と同じ会場で行われる今回の四大陸選手権で、羽生(左)や宇野ら日本勢は何をつかむか 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 平昌五輪まであと1年となる2017年2月。4年に一度の栄光に向けた前哨戦ともいえる四大陸選手権が、16日から19日にかけて、五輪のフィギュアスケート会場となる江陵アイスアリーナで開催される。五輪運営のためのテスト大会に位置づけられる同大会は、例年の四大陸選手権とは異なり、まさに「五輪をプレ体感」する時間。選手にとっては、今大会の成績だけでなく、五輪の本番会場で何をつかむかが重要な大会となる。

フィギュアの国際大会は初開催

 まず同大会で気になるのは、五輪の本番会場で開かれる、初のフィギュアスケートの国際大会であることだ。都市や会場の地理関係、施設の設備など、重要な情報が手に入る一戦となる。

 江陵は、韓国の東海岸の都市。平昌五輪の中心会場となる平昌は山間部のスキーリゾート地であるため、フィギュアスケートやスピードスケート、アイスホッケーなどの氷競技は、平昌から車で30分から1時間ほどの江陵市に会場が置かれている。選手村は未完成のため、今大会では選手たちは別のホテルに宿泊することになる。

江陵アイスアリーナは客席がなだらかで平面的な造り。観客やジャッジにアピールするために、選手たちは距離感や角度をつかんでおく必要がある 【Getty Images】

 フィギュアスケートとショートトラックの会場となる「江陵アイスアリーナ」は、2016年12月に完成。ショートトラックのワールドカップや、フィギュアスケートの韓国選手権などの会場として、テスト大会を重ねている。収容人数は1万2000人で、3年前のソチ五輪の会場だったアイスバーグと同規模。ただしアイスバーグがすり鉢状だったのに対して、江陵アイスアリーナは客席がなだらかで平面的。観客に囲まれる圧迫感は少ないものの、会場の空間の大きさに慣れる必要があるだろう。まずは選手たちが、どんな距離感と角度で、観客やジャッジにアピールするのかを初めて確認することになる。

羽生に対してどんな戦略で挑むか

 男子は、欧州選手権よりも四大陸選手権に五輪のメダル候補選手が集中しているため、五輪の前哨戦といえる激戦が予想される。

 優勝候補の筆頭は、今季のNHK杯で自身3度目の300点超えを果たした羽生結弦(ANA)。4回転ループを加えたことで、フリーで「4回転、3種類4本」という超人的な挑戦をしている。完璧な演技をすれば、自身が持つ330.43点の記録を更新することは間違いない。まさに自分の限界との真剣勝負といったところだ。

 ライバル陣営は、この羽生に対してどんな戦略で挑むかが重要になってくる。まず4回転ジャンプの種類や本数で挑もうとするのは、金博洋(中国)とネイサン・チェン(米国)の若手2人、そして宇野昌磨(中京大)だ。

 金は昨季、「ショートで2本、フリーで4本」の4回転を成功させ、世界最多本数を記録した。今季は滑りの基礎や演技面を磨き直すことで、演技構成点も少しずつ改善されている。

1月の全米選手権で「4回転を4種類5本」成功させたネイサン・チェン(左)。羽生と優勝を争う可能性も高そうだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 またチェンは、今季からシニアに上がったばかりの17歳。今季はフリーで「4回転を4種類5本」という前人未踏の挑戦をしており、すでに1月の全米選手権ではパーフェクトを達成。同レベルの滑りを四大陸選手権でもできれば、フリーでの200点超えは確実だろう。

 宇野は、4回転トウループに加え、世界初成功者となった4回転フリップが武器。さらに4回転ループも練習では成功しており、「4回転2種類では世界とは戦えない」と、今季後半からはループに挑戦する可能性を宣言。さらなる飛躍を目指している。

 一方、4回転ジャンプは羽生よりも少ないものの、総合力で迫るのが、パトリック・チャン(カナダ)だ。チャンは今季から新たに取り入れた4回転サルコウを、今大会でも成功させたいところ。もともと滑りの質の高さやエッジワークに定評があるため、ジャンプがまとまれば演技構成点(PCS)で得点を稼げる。

 このほかジャンプの質に定評がある閻涵(中国)や、4回転サルコウを武器にする田中刑事(倉敷芸術科学大)、個性的な演技が光るジェイソン・ブラウン(米国)らが、多彩な演技でメダルを狙う。男子は全選手を通じて、4回転の成功の可否だけでなく、演技面も含めた非常に高レベルな試合展開が予想される。

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