田中刑事、日野龍樹それぞれのNHK杯 同級生・羽生結弦の背中を追いかけて
3人で初めて迎えるシニアの国際大会
今年のNHK杯には羽生と田中(右)、そして日野の同学年3人が集った 【写真:アフロスポーツ】
同大会には、羽生(1994年12月生まれ)と同じ学年の日本人選手がもう2人出場していた。それがグランプリ(GP)シリーズ初の3位に入った田中刑事(倉敷芸術科学大/94年11月生まれ)と、9位の日野龍樹(中京大/95年2月生まれ)である。
そんな同級生3人が、シニアの国際大会で顔を合わせるのは初めてのこと。前日会見で彼らは「こうして3人が同じカテゴリーで戦えるのはうれしい」と口をそろえた。また田中と日野は「少しでもユヅ(羽生)に近づきたい」と闘志を燃やしていた。
田中が感じた上位2人との差
GPシリーズで初めて表彰台に立った田中(右)だが、羽生、ネイサン・チェン(左)との差を痛感したという 【写真:アフロスポーツ】
同じ岡山出身の高橋大輔に憧れ、表現力には定評のある田中だが、4回転ジャンプの習得はそれほど早かったわけではない。初めて試合で成功させたのが13−14シーズンのジュニアGPチェコ大会。すでに大学1年生になっていた。そのときはトウループで、昨シーズンのNHK杯ではサルコウも決めている。ただ、4回転ジャンプを完全に自分のモノにしたというわけではなく、試合では成功することが少ない。トウループに至っては今季のプログラムに組み込んでいなかった。
しかし、NHK杯ではその4回転サルコウを決めてみせた。SP3位で迎えたFS、冒頭のサルコウはやや乱れたものの、続く4回転サルコウ+2回転トウループのコンビネーションを見事に着氷。するとその勢いのまま、持ち前の表現力で会場を一体化させるパフォーマンスを披露した。合計得点は自己ベストを更新する248.44点。羽生、ネイサン・チェン(米国)に次いで3位表彰台入りを果たした。
「SP3位ということでそこから緊張感が増しました。FSを滑るまでは緊張に押しつぶされそうだったんですけど、リンクに立ったら演技しやすい雰囲気を作れたのがよかったと思います。変に身構えず、攻めていこうという気持ちでやりました」
表彰台に立ってみて感じたのは、上位2人と自身の差だった。羽生やチェンとは、跳べる4回転の種類や、プログラムに組み込んでいる本数でも劣っている。加えてスケーティングの向上も求められる。「まだまだ自分は世界で戦えるレベルではない」と痛感したという。
それでも、羽生とともに表彰台に立てたことは、今後への意欲にもつながったようだ。
「今回は優勝したユヅに向けられた国歌でしたけど、いつか自分の成績で聴きたいなと思いました。まだまだ追いつけないという気持ちもあるんですけど、NHK杯では僕も結果を出せたし、今後はこうして少しでも同じ舞台で戦って、ユヅに食らいついていけるように戦っていきたいです」