重友が5年ぶりVで世界陸上代表に名乗り 収穫と課題に瀬古リーダーは更なる注文
「悪いときに終わりたくない」と意欲再燃
重友梨佐が5年ぶりとなる大阪国際優勝。今夏のロンドン世界陸上に大きく近づいた 【写真は共同】
代表即時内定条件のうち、日本陸上競技連盟(日本陸連)が定める派遣設定記録2時間22分30秒には届かなかったが、後半追い上げ型の逆転優勝でロンドン行きに大きく前進した。
この5年の間には、ロンドン五輪78位や14年大阪国際63位があれば、北京世界選手権代表に選ばれた15年大阪国際2位もあり、リオデジャネイロ五輪が懸かった前回は5位ながら、優勝した福士加代子(ワコール)に8分23秒差をつけられるなど、泣き笑いのドラマに満ちていた。
重友は「悪いときに終わりたくない。自分に負けたことになるから」と、時には折れそうになった気持ちを修復し、意欲を再燃させ、走り続けてきたのだ。
ネガティブスプリットの試み
それが前半より後半を速く走る「ネガティブスプリット」だ。
五輪や世界選手権などメダルが懸かった大一番では、力のある海外勢は後半にペースを上げ、あるいは揺さぶり、激しく競り合う。「ネガティブスプリット」がメダルの条件になっていることが多いのだ。
女子マラソン日本勢は、昨夏のリオデジャネイロ五輪で代表3選手が14位(福士)、19位(田中智美/第一生命グループ)、46位(伊藤舞/大塚製薬)と低迷し、五輪では3大会連続入賞なし。それまでの五輪4大会連続でメダルを獲得してきただけに、危機感を強めた日本陸連は20年東京五輪でマラソンが輝きを取り戻すべく、マラソン強化戦略プロジェクトを立ち上げ、新しい強化方針のひとつとして、後半の駆け引きに加われる地力の養成に力点を置き、大阪では「ネガティブスプリット」の展開を作ろうと、ペースメーカーの設定が変更された。
前回5キロ16分40秒(1キロ平均3分20秒)だったペースを17分05秒〜10秒(1キロ平均3分25秒〜26秒)とし、先導する距離は最長30キロから中間点までとした。ハーフの通過設定は1時間12分00秒〜30秒。今夏の世界選手権の代表選考における派遣設定記録2時間22分30秒をクリアするには、当然、ネガティブスプリットでなければならない。代表をめざす各選手にその力量はあるのかが問われた。