【ボクシング】三浦隆司が米国ファン魅了のKO勝利! デラホーヤ氏は“年間最高試合”と称賛

杉浦大介

驚異的なスタミナを見せた三浦がダウンを奪う

 ただ、今戦ではバルガス戦とは違う点が3つあった。

 まず第1に、この日まで56勝(43KO)11敗という戦績のローマンのパンチには、バルガスほどのパワーは感じられなかった。また、70戦近いキャリアを誇る大ベテランでありながら、ローマンは中盤ラウンドのバッティングで少なからず集中力を失ったようにも見えた。何より、2度目の米リング登場だからか、絶対に打ち負けないという決意とともに、この日の三浦には落ち着きも感じられた。

 セコンドに攻勢を促された第7ラウンド以降、三浦は唸り声をあげながら左右のフックを振り回していく。正直、勝負をかけるのが早すぎるかとも思えたが、手数とパンチの威力は結局は勝利の瞬間まで衰えなかった。三浦のスタミナは驚異としか言いようがなく、決め手に欠けるローマンを徐々に追い詰めていく。

 そんな経緯を辿ったがゆえに、冒頭で述べたボディでのダウンシーンは唐突ではあっても、大きなサプライズではなかった。

 その後、ダメージの消えないローマンから11ラウンドにも三浦は連打でダウンを奪い、KO勝利は目前。最後は12ラウンドに左ショートのカウンターで3度目のダウンを追加し、ついにレフェリーが試合を止めた。

王座はバルガスからベルチェルトへ移動

「三浦、ローマンは年間最高試合だ(Miura Roman FOY)」

 試合後、プロモーターを務めたゴールデンボーイ・プロモーションズのオスカー・デラホーヤ氏はすかさずそうツイートした。実際に9ラウンド終了時点までの採点ではローマンが2−1でリードしており、両者が持ち味を出し合った好ファイトだったことは間違いない。

 そして、HBOに2度目の登場となった三浦がまたも視聴者を魅了し、今回は勝利という結果を出した意味は大きい。

 最近のHBOはボクシング中継の予算を削減しているが、多彩な役者がそろったスーパーフェザー級には投資を続ける模様。2戦続けて激闘の主役となった三浦にも、3度目の登場の声はかかるだろう。

 少々残念なのは、この日のメインイベントに登場したバルガスが25歳の新鋭ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)に11ラウンドTKOで敗れたこと。歴戦の雄は王座を失い、指名挑戦権を得るであろう三浦との因縁のリマッチの早期実現の可能性は薄くなってしまった。とはいえ、31勝(28KO)1敗という立派な戦績を持つベルチェルトも本格派であり、層の厚い階級に新たなスター候補が生まれたという見方もできる。

群雄割拠のスーパーフェザー級

 現役最強と評価されるようになったWBO王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を頂点に、内山高志(ワタナベ)との再戦を制したばかりのWBAスーパー王者ジェスレル・コラレス(パナマ)、フロイド・メイウェザーの愛弟子として注目を集める17戦全勝(16KO)のIBF王者ゲルボンタ・デービス(米国)、大ベテランの激闘王オルランド・サリド(メキシコ)、そしてバルガスからバトンを受け継いだベルチェルト……など。

 群雄割拠のスーパーフェザー級戦線に、今後、三浦はどんな形で関わっていくのか。WBCの規定通り、ベルチェルトとのタイトル戦に向かうのか。あるいは他のビッグファイトが見えてくるのか。再びの“年間最高試合”候補での印象的なKO勝利は、また新たな始まり。HBOの関係者、米国のファンも魅了した三浦の行方に、本場リングでの再びのビッグファイトが迫っていることは間違いあるまい。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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