メンタルだけではない稀勢の里の敗因 横綱戦と平幕相手で異なった踏み込み
大関奮闘の1年、際立った安定感
賜盃なく手にした年間最多勝のタイトルに困惑する稀勢の里だが、抜群の安定感が証明されたことには違いない 【写真は共同】
「喜んでいいのか、悔しんでいいのか、分からない」と稀勢の里は困惑する。悲願の初賜盃には届かなかったが、年6場所中、12勝以上が4場所でいずれもが優勝に準ずる成績というのは、抜群の安定感を誇っている証拠でもある。
稀勢の里が今場所も見せた2つの顔
しかし、そんな淡い期待も3日目に早くも打ち砕かれてしまう。約2年ぶりの対戦となった遠藤に対し、何もできずに一方的に押し出されると、7日目の正代戦で2敗目を喫し、上位戦が始まる前に優勝圏外へと追いやられてしまった。
9日目に綱取りの豪栄道を辛くも土俵際の突き落としで退けると、翌10日目には早くも白鵬戦が組まれた。過去には大事なところでことごとく苦杯をなめてきたが、この場所はすでに全勝の鶴竜とは2差。何のプレッシャーもなく挑めたのは確かだろう。立ち合いは白鵬が横を向いてしまうほどの強烈な左おっつけ。すぐに向き直った白鵬だったが上体は浮いてしまい、反撃の威力も今ひとつ。相手の寄りを土俵際で残した稀勢の里は右上手をしっかりつかんで左ものぞかせる。こうなれば、さすがの大横綱も旗色が悪い。左下手まわしも引きつけると堂々の真っ向勝負で寄り切った。
3横綱連破の翌日に落とし穴は待っていた 【写真は共同】
優勝争いは一転、混戦となり“無冠の大関”にもがぜん、チャンスが巡って来たが、13日目は格下の栃ノ心に相手十分の右四つがっぷりの体勢で寄り切られ、盛り上がったムードはたった1日でしぼんでしまった。3横綱連破翌日の痛すぎる取りこぼし。八角理事長(元横綱北勝海)も「昨日までのも稀勢の里。これも稀勢の里」と苦笑いするしかなかった。