シンクロ乾のパートナーに2人が名乗り 1カ月で結果残した新生・井村ジャパン

沢田聡子
「目標が達成できたので、ほっとしています。全員の選手にとって、いい経験になった大会だった」

「全種目優勝」を目標に掲げて第10回アジア水泳選手権大会に臨んだシンクロ日本代表の井村雅代ヘッドコーチは、20日、最終種目のフリーコンビネーションで中国をかわして優勝を決めた後、「どのような大会でも優勝するということは非常に難しい」とミックスゾーンで安堵(あんど)の色をにじませた。

中国は主力不在も、メダリストの貫禄見せた日本

デュエットのTRを制した乾(右)と中牧(左)を笑顔で見守る井村コーチ 【写真は共同】

 リオデジャネイロ五輪でチーム・デュエットとも銅メダルを獲得し、五輪の表彰台に戻ったシンクロナイズドスイミング日本代表が、2020年東京五輪を目指しスタートを切った。

 リオ五輪代表メンバーの引退もあり、初めて代表入りする選手を加えて臨んだ日本。エース格の乾友紀子(井村シンクロクラブ)が「メンバーが変わったというのは何の言い訳にもならない。ちょっと隙を見せてしまうと、シンクロという競技は後で盛り返すのが大変」と語っているように、この大会で勝ち切ることは重要だった。新生日本代表が初めて闘う国際大会は自国開催。東京五輪のシンクロ会場は、今大会の会場・東京辰巳国際水泳場に隣接する辰巳の森海浜公園に新設される「オリンピックアクアティクスセンター」の予定だ。代表チームも見る側も、4年後の東京五輪に思いをはせながらの大会となった。

 現在アジアでは、リオ五輪のデュエット、チームとも銀メダルを獲得し、表彰台で日本より一つ高いところに立った中国が盟主として君臨している。その中国は今回、主力を除いた若手中心のメンバーで参加。日本はメダリストの貫禄を見せて各種目で勝ち続けたものの、最後のフリーコンビネーションでの中国の泳ぎは素晴らしく、点数でも日本に1.5334差と迫り、やはり怖い存在として印象を残した。

乾との新デュエットに抜てきされた2選手

デュエットのTRには、リオ五輪でジャンパーとして活躍した中村(右)が抜てきされた 【Getty Images】

 リオで乾とデュエットを組んだ三井梨紗子(東京シンクロクラブ)の引退により、今大会のデュエットにはテクニカルルーティン(以下TR)は乾と中村麻衣(井村シンクロクラブ)、フリールーティン(以下FR)は乾と中牧佳南(井村シンクロクラブ)が組んで出場した。三井の引退は井村コーチにとっても大きな衝撃だったようだが「日本のシンクロは止まる訳にはいかない。前に進まなくてはいけない」と考え、1カ月後に迫ったアジア選手権での乾のパートナーに中村と中牧を抜てきすることを決断した。

 乾、中村、中牧は共に井村シンクロクラブ所属で泳ぎ方が似ているため、乾は泳ぐ際に「水が当たらない」とやりやすさを感じているといい、それは大きなメリットと言える。「パワーで押す」タイプの三井に対し、乾と中村が組むと「技術力が高い」デュエット、また乾と中牧は「綺麗な」デュエットになるというのが井村コーチの評価だ。体格を見ると乾と中村は身長差があり、乾と中牧は似通っている。

 中村はリオ五輪のチームでもジャンパーとして活躍、主力として戦った一方で、中牧はチームの練習中も怒られることが多い存在だった。井村コーチが見たところ、乾も中村との演技前には自分のことに集中するが、中牧に対しては励ましながら演技に向かうという関係性の違いがあったという。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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