シンクロ乾のパートナーに2人が名乗り 1カ月で結果残した新生・井村ジャパン

沢田聡子

中牧は「この1カ月で化けた」

FRで乾(左)のパートナーとなった中牧佳南。井村コーチは「綺麗な」デュエットと評した 【写真は共同】

 中牧について、井村コーチは大会前の代表選考会からその成長ぶりを口にしており、今大会最終日のデュエットFR後には「練習も含めて一番良い出来でしたね」と評価している。また大会前にデュエットに抜てきされた中牧の重圧を気遣い、メールで「ピンチはチャンスだからね」と励ましたところ、中牧から「頑張ります」という返信があったというエピソードを披露。「(今大会の準備期間である)この1カ月で『化けた』という言葉がぴったり」と話した。

 ミックスゾーンでも控えめな印象の中牧にその評価を伝えると「自分ではあまり感じていない」としながらも、「泳ぎ終わって、『今日は良かった』と言われて少しほっとしました」と責任を果たした安堵(あんど)をかみしめている様子だった。観客席で見守った東京シンクロクラブを率いる前シンクロ委員長・金子正子氏も「努力したんだろうなと思いました。良かったです」と評する中牧の成長は、誰もが認めるところだと言える。

「今後どういうやり方がいいかは、ゆっくり考えたい」と語った井村コーチ。来夏の世界選手権でもTR・FRで各一人ずつの選手を乾と組ませることも「あり得る」としており、東京五輪を見据えてデュエットを育てていく方針だ。

新メンバーへの宿題

1カ月でチームをひとまず形にしてみせた井村コーチ(左) 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 経験豊富な井村ヘッドコーチにとっても、1カ月で代表チームを作り上げて大会に出るのは初めてのことだったという。「上辺だけの完成」と言いながらも、新しいチームで臨む初の国際大会で全種目優勝という結果を残し、東京五輪に向け「スタートが切れた」と話す。

 チームの課題として井村コーチが挙げるのは、大型の選手が引退したことでリフトの土台となる選手がいないことと、立ち泳ぎの技術が低いこと。新チームで土台となるべく今鍛えているのは福村寿華(井村シンクロクラブ)と阿久津咲子(東京シンクロクラブ)で、日本代表として今大会で初の試合を経験したばかりだ。また井村コーチは、リオ五輪に出場したメンバーにはこの後休養を与えるものの、五輪後に代表入りした新メンバーには「宿題」を与え、持ち帰らせると宣言した。

 リオ五輪前、井村コーチが日本代表の強化に携わったのは実質2年半だったのに対し、東京五輪に向けては「まるまる4年ある」。「日々の練習の中で切磋琢磨(せっさたくま)していく」と語る井村コーチの下、初の国際大会を東京で経験した若いチームが、4年後の東京五輪に向けて得たものは大きい。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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