早稲田大ラグビー部、異例の強化計画 「これからが本番」王者・帝京大に挑む

斉藤健仁

「最後のチャンス」シーズン中のフィジカル強化

桑野主将(右端)を中心に、春から体重を大幅に増やした 【斉藤健仁】

 だが、10月16日、早稲田大学は帝京大学が134対3で圧勝した日本体育大学に、45対40と大苦戦。1年生が多く、プレーに波があることを鑑みても、筑波大戦と同じチームとは思えない試合内容だった。

 実は、チームでは筑波大戦を一つ目の山とし、11月6日の帝京大戦を2つ目の山に設定した。その過程で、帝京大戦までの5週間のうち、3週間は日本体育大戦と青山学院大戦と2試合が組まれていたものの、「最後のチャンスだと思いました。フワッとアタック練習するよりも、帝京大学に物理的なパワーで負けないように根本であるフィジカルをやろうと思った」と山下監督が言うように、もう一度、体を追い込んだ。

 すでに1軍の選手たちは春からの体作りで、筋肉で体重を平均7〜8キロ、増やしていた。それでも、シーズンに入ると1〜2キロ落ちていたために、具体的には3週間で、除脂肪体重を1キロ増やすことを目的に、ほぼ毎日ウェイトトレーニングを行い、先週の火曜日と水曜日は1日3回行った。3週間でチーム練習は2回しかやらなかったという。

 まるで2015年春のエディー・ジャパンを思い出すような――試合のための練習は行わず、先を見据えてフィジカルアップを目指した。「シーズン中にチーム練習をやらず、1日3回もウェイトトレーニングをやったことは僕の記憶にはありません。日本体育大戦も負ける気がしなかった。試合の結果はしょうがない。ここは準備に専念しようと思いました」(山下監督)

SH齋藤「体重は7キロ増えた」

将来性の高さを評価されている1年生SH齋藤 【斉藤健仁】

 実際には、今シーズンの鍵を握るルーキーたちはどう感じているのか。SH齋藤は「体重は7キロ増えて、筋肉もついてきたと思います。(桐蔭学園高の戦術は)シェイプで(早稲田大は)ポッドで慣れてない部分もありますが、いろんなラグビーができるようになったほうがいいと思っています」と言えば、SO岸岡も「ここまで(シーズン中にウェイトトレーニングを)やったことがない。体は重いですが、きつい状況を乗り越えていかないといけない」と前を向いた。

 また、1年生とは思えない186センチ、100キロの大型CTB中野は「体脂肪は少しずつ減ってきましたし、アジリティー(敏捷性)もついてきた。体つきも変わってきている」と言えば、すでに4トライを挙げているFB梅津は「試合でスキルが出せるようになってきた。ランで勝負できるようになってきた」と、山下監督の指導とフィジカルアップの効果を実感している。

山下監督「伸びシロしかない」

1年生FB梅津はすでに4トライを挙げる活躍を見せている 【斉藤健仁】

 早稲田大は11月6日に、ともに全勝の帝京大と対戦する。ただ2010年以来、白星から遠ざかっており、昨年は15対92で大敗した相手だ。今シーズン、グラウンド内だけでなく、外でもジャージのデザインを一新するなど「変革」を実行し続ける早稲田大学がどこまで進化したか、真価が問われる試合となろう。

「体を追い込んで体重が増えて、戦う土台ができている。(この4年間で)一番フィジカル的には調子がいい」とLO桑野主将が言えば、「これからが本番です。買いかぶることはしませんが、1年生はまだまだ成長する。チームとしては伸びシロしかない」と山下監督と言い切った。

 青年監督とルーキーたちが引っ張るアカクロのチャレンジャーたちは、この2週間でチーム練習に専念し、戦術的にブラッシュアップをかけて、大学選手権7連覇中の大学王者に挑む。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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