早稲田大ラグビー部、復活なるか? 「史上初の敗戦」からのスタート

斉藤健仁

元主将の山下大悟氏が新監督に

山下新監督(中央)の下で大学選手権優勝を目指す 【斉藤健仁】

 スローガンは「BE THE CHAIN(一本の強い鎖になれ!)」と掲げた山下・早稲田の公式戦は黒星スタートとなった。7シーズン、ラグビーの大学選手権優勝から遠ざかっている早稲田大ラグビー部。2002年度、清宮克幸監督(現ヤマハ発動機監督)の下、キャプテンとして優勝に大きく貢献した山下大悟が現役を引退し、2月に監督に就任。チームの再建を一手に任された。

 5月15日、夏を思わせる日差しの中、東京・上井草の早稲田大グラウンドで、春季大会の初戦、青山学院大戦が行われた。互いに得点を取り合う拮抗した展開となる。29対31で迎えた後半、早稲田が終始優勢だったスクラムで相手の反則を誘う。

 見ていたファンの誰しもが「もう一度、スクラムだ!」と思った瞬間、FWの選手がクイックリスタートを仕掛けて、最後はSOがディフェンスラインの裏にボールを蹴ったもののトライに届かず、結局、そのままノーサイド。公式戦で青山学院大に史上初めて敗戦を喫した。

「スクラムコーチ」を置いてセットプレーを強化

青山学院大戦で優位に立っていたスクラム 【斉藤健仁】

 山下監督が、強化の柱の一つに置いたのが「セットプレーの強化」だった。監督の2学年下の伊藤雄大氏を招聘、大学ラグビー界では、おそらく唯一のフルタイムのスクラムコーチに就任した。「監督には大学で一番のスクラムを作ってくれと言われました」。No.8だった鶴川達彦(3年)をPRにコンバートし、5月からトップリーグの強豪に出稽古に行くなど、強化を進めている。

 ただ最後のシーンについて伊藤コーチは「最後はスクラムにこだわってほしかった。まだ選手たちのマインドを変えることができなかった」と悔しそうな表情を見せた。ラインアウトの成功率はさほど良くなかったが、低く8人で組むスクラムで相手にプレッシャーをかけ続けていた。鶴川はPRになって3週間ほどとは感じさせなかった。今後、ライバルの帝京大、明治大、東海大を上回るスクラムを組めるようになるか。焦点の一つだ。

青山学院大戦では守備が乱れるシーンも

組織ディフェンスはこれからさらに整備することになりそうだ 【斉藤健仁】

「ディフェンスとブレイクダウン、そしてセットプレー。王道を行かないと今のラグビーは勝てない」。そう語るのは、山下監督の大学時代の同期で、国学院栃木で日本代表CTB田村優(NEC)、そして弟・熙(東芝)兄弟らも指導した古庄史和ヘッドコーチだ。山下監督が、文字通り、“監督”で全体を見る立場であるが、監督の右腕として古庄コーチは、グラウンドでのコーチングに専念する。「今年はディフェンスコーチになろうと思いました」(古庄コーチ)

 ただ、試合では、強化してきたはずの組織ディフェンスは、青山学院大のポッド・アタックが良かったこともあり、まだ「強みになっている」とは言いがたい。セットすることができていても、時間が経つにつれてノミネート(マークする相手を確認し、味方に伝えること)できなくなってきたり、相手がボールを動かすにつれてミスマッチが起きたりしていた。またブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)では、2人目、3人目の選手がオーバーする意識が高すぎたこともあり、反則がやや目立った。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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