アンチェロッティは完璧な指揮官? バイエルンが取り戻した家族的な雰囲気

好スタートを切ったバイエルン

開幕から5勝1分けで首位に立つバイエルン。まずは素晴らしい結果を手にした 【写真:ロイター/アフロ】

 ドイツ・ブンデスリーガ開幕から約2カ月が過ぎた。5勝1分けで首位に立つバイエルンは、まずは素晴らしい結果を手にしたと言えるだろう。ミュンヘンでは、カルロ・アンチェロッティがバイエルンに完璧にフィットする指揮官であると称賛されている。直近の試合は残念な結果となったが、ミュンヘンの満足感は色あせてはいない。

 2013年の夏、クラブとファン、そしてメディアは、ペップ・グアルディオラを救世主のごとく迎えた。ファッションにおいても新たなスタイルとして騒がれ、監督業の“神”であるともてはやされた。だが、グアルディオラ本人が没頭したのは戦術、戦術、戦術……それだけだった。

 グアルディオラのお披露目に比べて、アンチェロッティのミュンヘンでの最初の日々は、もっと落ち着いてリラックスしたもので、ヒステリーとは無縁だった。ミランで2度、レアル・マドリーで1度、すでにチャンピオンズリーグ(CL)を3度制していることも、理由の1つだったかもしれない。

 バイエルンのスターたちが全員そろって1試合たりともプレーしないうちから、数日もすると、クラブ周辺には早くも“感じられるもの”が漂った。このクラブにとって、完璧な男がやって来た、という感触である。

 そのように言われたのは、写真撮影のために伝統の皮製品の衣装に身を包むことを、指揮官が大した問題としなかったからではない。というより、無理してそうする必要が、アンチェロッティにはなかったのだ。すでにバイエルン地方のライフスタイルを気に入っており、ワインの愛好家であった前任者とは違い、グラスに注がれたビールを本当に愛している。これはドイツの南部において、共感を得るのに大いに役立った。

アンチェロッティは“人間力”に長けた監督

アンチェロッティ(中央)は“人間力”に長けた監督である 【写真:ロイター/アフロ】

 チームを預かって数日で、アンチェロッティは家族的な雰囲気をクラブへもたらすことに成功していた。これはクラブの有名なモットー、「オレたちはオレたちだ(Mia san mia/ミア・ザン・ミア)」に通じるものである。このミュンヘンのクラブは、こうした家族的雰囲気で知られており、それこそがマンチェスターやマドリー、ミラノやトリノのビッグクラブと、バイエルンを何十年も違う存在たらしめてきたものである。サッカーの哲学者、グアルディオラが率いていた数年間でやや冷めていたのが、まさにこの雰囲気だった。

『シュポルト・ビルト』紙でバイエルンを深く追いかけているクリスティアン・ファルクも、「雰囲気は全体的に良くなっている」と認める。

「アンチェロッティは毎朝、体重をコントロールするようなことはしない。もっとチームのことを信頼しているし、“自己責任”という言葉を信じているんだ」

 アンチェロッティは“人間力”に長けた監督である。スター選手をいかに喜ばせるかも心得ている。それが開幕直後のバイエルンのプレーから、非常に強く感じられた。シーズン序盤の戦いぶりは、グアルディオラ時代のプレーをも上回っているように見えたほどだ。

 ファルクは「フランク・リベリーは明らかに勝者だ」と話す。「それにシャビ・アロンソも、もちろんロベルト・レバンドフスキもそうだ。最高に気分が良さそうなのは、グアルディオラの時代が終わったことも一因であるように思える。アンチェロッティはこれ以上、他のストライカーは必要ないと発言している。レバンドフスキへの信頼は厚いんだ」と語る。だからこそ、夏の移籍市場で流れたロメル・ルカクやゴンサロ・イグアイン獲得のうわさも、あっという間に消えてしまった。

1/2ページ

著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント