再起を目指すサバシア、ただ勝利のために 依存症からの克服と投球スタイルの変化

岡田コウタロウ

再起をかけるサバシアは今季、30試合に先発し9勝12敗の成績を残した 【Getty Images】

 2015年10月4日、今からほぼ1年前――。ヤンキースはレギュラーシーズン最終戦を行うためにボルティモアにいた。その試合前、CC・サバシアはラリー・ロスチャイルド投手コーチに「私には助けが必要です」とアルコール依存症であることを告白。ワイルドカードでのプレーオフ進出を決めていたチームを離れ、リハビリ施設に入ることを決断した。ワイルドカード決戦直前、衝撃的な出来事だった。ロスチャイルド投手コーチは信頼を寄せていたベテランからの突然の告白を次のように振り返る。

「驚いたが、目の前の問題から逃げずに立ち向かうのは彼らしい決断だと理解した。弱さを見せるのは難しい。あの時、良い意味で力が抜けたのでは。それまで彼は多くの責任を背負ってきたから」

ワークホースの代表格

 時計の針を少し戻そう。サバシアは2000年代のメジャーリーグを代表するエースだった。01年に20歳の時にインディアンスでデビュー。巨体から繰り出される150キロ台の速球と鋭いスライダーを武器に17勝5敗の好成績を残し、新人王争いでイチロー(当時マリナーズ)に次ぐ2位につけた。

 毎年のように30試合以上に投げ、07年には19勝を挙げて初めてサイ・ヤング賞を獲得。その後、ブリュワーズ、ヤンキースとユニホームを変えて13年まで13年連続2桁勝利をマーク。09年から加入したヤンキースでは6年連続開幕投手を務め、名門球団のエースとして活躍した。現役2位の通算223勝を挙げ、2度の最多勝、オールスターに6度選出された。

 特筆すべきはそのタフネスぶりだろう。16年間で計482試合に全て先発で登板し、07年から7年連続200イニングに到達。08年には2球団で計253回を投げた。1シーズン平均198回、中4日で先発した試合は270試合。38完投は現役トップで、ワークホース(頑丈でイニングを多く投げる投手)の代表格と言える存在だった。

身を削って大車輪の働き

 彼のキャリアを振り返ってみると、大半で優勝請負人としての責任を背負ってきた印象が強い。3球団で7度のポストシーズンを経験。08年にはシーズン途中に移籍したブリュワーズで、レギュラーシーズン最後の3試合続けて中3日で先発。最終戦では122球の完投勝利を挙げ、チームを26年ぶりのプレーオフに導いた。その年、ブリュワーズでは17試合に投げて7完投(3完封)という大車輪の働きだった。

 09年にはヤンキース1年目で19勝を挙げて最多勝を獲得。ポストシーズンで3勝1敗、防御率1.98と好投し、ワールドシリーズ制覇に貢献した。松井秀喜やアレックス・ロドリゲスのドラマチックな活躍が印象的だったが、大型契約を結んで加入した左腕も中3日の登板を重ねて投手陣をけん引。ジラルディ監督が「身を削ってチームに尽くしてくれた」と信頼を寄せるように、献身的な左腕の人間性を評価する声は多い。

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