エースとして確立した田中将大の3年目 支配的な大黒柱へ、課題はイニング数

杉浦大介

メジャー移籍後最高の成績

メジャー移籍後、最高の成績を残し、ヤンキースのエースとして確立した田中 【Getty Images】

 ヤンキースのエースとして確立したシーズン――。田中将大の2016年を振り返ったとき、そんな風に総括しても異論のあるファン、関係者は少ないだろう。

 今季は31試合に投げて14勝4敗、防御率3.07、165奪三振と堂々たる成績。登板数、勝ち星、イニング、奪三振などは軒並みMLBではキャリアハイで、ア・リーグ最優秀防御率のタイトルも最後まで狙える位置につけた。 
 
 何より、メジャー入り直後から指摘されてきた耐久力への不安を拭い去り、ほぼ1年を通じてローテーションを守り続けたことは特筆に値する。最後の2試合こそ大事をとって回避したものの、今季の投球回数は199回3分の2。メジャーでの一流の条件とされる200イニングにわずかに及ばなかったとはいえ、好内容で投げていなければこれだけのイニングを積み重ねられるものではない。

「最後の最後でこういう形にはなって、2試合スキップという形にはなってしまいましたけど、それまではローテーションに穴を開けることなく、しっかりと投げられました。ひとつステップアップはできたのかなという気持ちはあります」

 10月1日(現地時間)、ヤンキースタジアムで今季最後のメディアセッションに臨んだ田中の言葉からは満足感も少なからずにじんだ。ポストシーズンに出られなかったのは残念だったが、トレード期限に多くの主力を放出して再建態勢に入ったあとで、田中の貢献がなければヤンキースは9月までプレーオフ争いに残れなかったはずだ。

吹き飛ばした右ひじの不安

 2014年に右ひじの靭帯(じんたい)部分断裂、昨季終了後には右腕から骨棘を除去する手術を受けた後で、今季開幕直後はコンディションへの不安が常に取りざたされた。昨年は24試合で計25本塁打を許したおかげで、前半戦では“一発病”が懸念された。また、オールスター前後までは、中4日での登板時に成績が悪化することが散々騒がれた。しかし、シーズンを通じて、田中はそれらの課題を丁寧にひとつずつクリアしていった。

「メディアの方々から質問がずっと飛んでいましたけど、抑え出したら何も聞かれなくなった。しっかりやれたから、そういう突っつきたくなるところがなくなったのかなとは思います。今に見とけよという思いは強かったかもしれないですね」

 まるで重箱の隅をつつくように粗探しをするニューヨークのメディアに関して、中4日の件に関して聞かれた際、田中は苦笑いしながらそう振り返っていた。

“それで、最近は何をしたの?(What have you done lately?)”がキャッチフレーズのようなニューヨークの街。ここでは過去の実績は戦ってはくれない。そんな現金な場所で、時にフラストレーションを感じながらも、田中は結果を出し続けた。

 周囲の心配をよそに、順調にイニングを重ねる過程で、右ひじへの不安は吹き飛んだ。被本塁打数も今季は22本にまで減少。そしてシーズン中盤から多くのゲームで中4日で先発しながら、オールスター以降は8勝2敗、防御率2.83という見事な成績を残した。そんな結果を突きつけられ、私たちメディアも徐々に突っ込みどころを失っていった。最終的には厄介なニューヨーカーを綺麗に黙らせ、実力を認めさせたのだから、この1年間の田中には脱帽するしかない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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