地区V一番乗りのカブス 名将マッドン監督が意図した選手起用法

菊地慶剛

ベテランも認めるチームのまとまり

地区優勝を飾り、シャンパンファイトを楽しむカブスの選手 【Getty Images】

 シカゴ・カブスが9月15日(現地時間)、今季一番乗りで8年ぶりのナ・リーグ中地区優勝を飾った。優勝マジック「1」で臨んだ本拠地でのブリュワーズ戦には敗れはしたものの、同地区2位のカージナルスが敗れたことで優勝決定。ファンにとってはやや寂しいかたちにはなったが、シーズンを通して圧倒的な強さを誇り、早くもファンの間では108年ぶりのワールドシリーズ制覇の期待が自然と高まっている。

 今季のカブスは開幕から独走態勢を築き、一時は2001年にシアトル・マリナーズ、1906年のカブスが達成したメジャー最多勝利数116勝に迫る勢いも見せた。それでも7月に12勝14敗と負け越すなど陰りを見せたりもしたが、8月は再び22勝6敗と巻き返し、前半の貯金もありナ・リーグ中地区で危なげなく逃げ切った。

 データを基に強さの理由を考察すれば、4投手(ジェーク・アリエッタ、ジョン・レスター、ジェーソン・ハメル、カイル・ヘンドリックスの各投手)が2桁勝利を挙げ、チーム防御率はリーグ1位を誇る圧倒的な投手力の他、チーム打率こそ2割5分台と決して高くはないものの得点数は堂々のリーグ2位の爆発力を誇る打線と、投打ともに穴のないチーム力が光った。

 だが個人的には感じていたのは、データだけでは推し量れないチームの和、団結力の素晴らしさだった。シーズン開幕直後から連戦連勝が続くチームについて、今季から加入したベン・ゾブリスト選手が以下のように説明してくれたがことがあった。

「もちろん試合に勝てばチームの雰囲気は良くなるものだ。だがキャンプから感じていたことだが、ここまで皆が仲良く、雰囲気の良いチームは今まで所属したチーム以上だよ」
 ゾブリストといえば、昨年はロイヤルズに在籍しワールドシリーズ制覇を経験し、さらに長年在籍したレイズでも何度もプレーオフに出場するなど、強豪チームでプレーしてきた選手だ。そんなゾブリストからしても、今シーズンのカブスのまとまりは格別だったのだ。

破天荒?なマッドンスタイル

 選手が気分良くプレーできる環境を整えたのが、今や名将の呼び声がすっかり定着したジョー・マッドン監督だった。その破天荒な人心掌握術はキャンプから存分に発揮されていた。

 練習前には数々のイベントを仕掛け選手を盛り上げたり、自らデザインしたTシャツを何枚も配布しユニホームを使用せずに練習させたり、キャンプ施設は常に笑顔に包まれていた。川崎宗則選手がカラオケを披露し皆で大合唱した動画が話題を集めたのも、そんなイベントの一つだった。

 シーズンに入ってもマッドン流は留まるところを知らなかった。これまでメジャーのチームが遠征する際、服装はスーツを着用するものだが、カブスの場合はカジュアルが普通で、また時によりマッドン監督の発案で統一テーマに合わせた派手な特注スーツや特性ジャージーに皆で身を包み、何度も話題を集めたりもした。

 とにかく人生を謳歌(おうか)したいというマッドン監督のライフスタイルが完全にチーム全員に浸透し、その一体感はゾブリストが指摘する通り、他チームではお目にかかれないものだった。これが土台にあったからこそ、好成績にも繋がった部分も相当にあったはずだ。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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