昨季MLBデビューも… マイナーでもがく村田透、苦境から再挑戦

菊地慶剛

昨シーズンはメジャーデビューを果たし、1試合に先発した村田 【Getty Images】

 インディアンス傘下の3Aコロンバスに所属する村田透投手が米国挑戦6年目で、殊のほか苦しいシーズンを過ごしている。

 7月30日(現地時間)時点で5勝1敗4セーブ、防御率3.48と、成績自体は決して悪いものではない。しかし昨年はシーズンを通して先発ローテーションを守り15勝を挙げ、3Aインターナショナルリーグで最多勝のタイトルを獲得した投手が、今季の先発登板はわずか3試合しかないのだ。

 昨シーズンはダブルヘッダーによる先発投手の緊急補強だったとはいえ、1試合だけだが念願のメジャー初登板も果たした。普通なら今シーズンは村田にとってメジャー再昇格を狙う勝負の年になるはずだった。それなのにどうして現在のような厳しい状況に置かれることになったのだろうか?

 このオフにインディアンスと再契約を結ぶ段階で、その“予兆”はあった。マイナー契約は仕方がないとしても、期待していた招待選手としてのメジャーキャンプ参加が実現しなかったのだ。しかもチームから今シーズンは先発投手が余っている状態だと通達された。

 もともとインディアンスにはメジャー、3Aを通じて将来有望な若手先発陣がそろっていた。さらに昨年のシーズン終盤には2Aから上がってきた投手が3Aで好投を演じるなど、若手の台頭も目覚ましかった。必然的に先発投手が飽和状態になるというのは、村田も肌で感じてはいた。

「下にたくさんの有望な選手がいることは分かっていた。それがたまたま3Aにいなかっただけで、2A、1Aにそろっていた。その3Aに空きがあったというので(自分が先発に入れた)……」

十分な調整ができなかった春のキャンプ

 過去5年間、村田はずっとインディアンスのマイナーリーグに在籍しており、チームの選手事情は熟知していた。とはいえ昨年はしっかりチームを満足させるだけの成績を残していただけに、やはり村田の心境は複雑だったはずだ。ただその一方で、昨年の活躍で村田にも逆境を跳ね返そうとするだけの決意もあった。

「それらの状況を理解した上で戻ってきた部分もあります。それに負けないピッチングができたらいいというのが自分の中にもありましたし、やれると思っていなかったら帰ってこなかったわけですから」

 実際にキャンプが始まると、村田はチームに振り回され、自分の調整どころではなかった。たびたびバックアップ(補充メンバー)というかたちでメジャーのオープン戦に呼ばれ、ブルペン待機を命じられた。あくまでバックアップは登板予定選手に不測の事態があった際の緊急要員なので、言うまでもなく登板機会はなし。さらにバックアップを繰り返すことで必然的にマイナーのオープン戦での登板機会も失っていった。結局、村田は紅白戦で最長3イニングを投げただけで、不十分な調整のまま開幕を迎えることになった。

「(メジャーキャンプに呼ばれず)マイナーキャンプに回された時点で、便利屋さんになるのは間違いないだろうなという予想はありました。チーム側も、投げられないなりにしっかり調整してくるというのが頭にあったのだと思います」

 実はキャンプ中、村田は多少自分の“居場所”を見失っていたように感じていた。当時取材していた筆者に「3Aに行けるかもわからないです」と明かしてくれたことがあったからだ。これまで長年メジャーを取材してきた経験上、彼の年齢を考えれば決して2Aに回るようなことはないとの認識があったため、その発言の意味が理解できないでいた。

 今回あらためて村田から、キャンプ開始直後にもチームから3Aでの先発入りを確約できないと説明されていたのを聞くに及び、ようやくその当時の心情を把握することができた。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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