地区V一番乗りのカブス 名将マッドン監督が意図した選手起用法

菊地慶剛

多くの選手が複数のポジションで出場

内外野の複数ポジションを守るゾブリスト 【Getty Images】

 今シーズンのマッドン監督の名采配はそれだけではない。今後メジャーの新しいトレンドになるのではないかと思える選手起用を実行した。それは主力選手でも構わずチーム事情に応じて複数ポジションを担当させたのだ。

 レイズ監督時代にもゾブリストに外野と内野を守らせ、また昨年もカイル・シュワバー選手を捕手と外野で併用したが、今シーズンはそれがさらにエスカレートしていった。

 主な選手を見ても、捕手のデービッド・ロス選手とミゲル・モンテロ選手以外で1つのポジションしか守っていないのは、ファーストのアンソニー・リゾ選手、ショートのアディソン・ラッセル選手、センターのデクスター・ファウラー選手の3人のみ(ミゲル・モンテロ選手はキャッチャーのほか投手で1試合登板している)。それ以外の選手は複数ポジションで起用されている。

 もちろん他チームでも複数ポジションを守れるユーティリティ選手を抱えているが、大抵は内野なら内野、外野なら外野の複数ポジションをこなすのが普通だ。しかし今シーズンのカブスの場合、ゾブリストのみならず中軸のカイル・ブライアント選手をはじめ、ハビエル・バエス選手、ウィルソン・コントレラス選手、クリス・コグラン選手が内野と外野、もしくは捕手と外野という複数ポジションをこなしている。特にバエスは、内野の全ポジションと左翼に起用され、複数ポジションをこなしながらほぼ主力選手と変わらない125試合に出場している。

常にチーム力を一定に保つことに成功

 これが何を意味するのか?

 162試合と長丁場を乗り切るために、うまくローテーションを組みながら順番に選手を休ませることができるのはもちろんのこと、主力選手に負傷離脱が出た場合でも、残った選手で問題なく穴を埋めることができるのだ。

 つまり主力選手を失ったとしても、マイナーから昇格させる補充選手にそれほど頼る必要もないので、チームのレベルを常に一定以上に保つことができるというわけだ。マッドン監督自身も以下のように説明している。

「シーズンを通して考えれば、選手個々をうまくフィットさせながら起用していった。選手やコーチと話し合い、選手の様子を確認しながら入れ替わりでオープン戦のようにまったく起用しない日を作り、選手に任せた。休養が主な目的だが、それ以外にもそれぞれの個別練習に当ててもらう効果もあった。時には疲労から自分のプレーを見失うこともあるからだ。とにかくその点に集中しながら選手全員がプレーオフの準備ができるように考えていた」

 この采配は見事に的中した。シーズンを通して安定した戦いができ、シーズン途中で補充のためメジャーに昇格した選手の中で、経験のある30代の選手は川崎のみ。残りの選手は将来を嘱望された若手選手ばかりで、3選手に至っては今シーズンがメジャー初昇格だった。レベルを落とさずに戦いながら、その一方で若手有望選手に経験を積ませるチャンスをも作り出していたのだ。川崎が米国挑戦5年目でメジャーの出場試合数が最も少なくなっているのも、この辺りのチーム事情がかなり影響したとも言えるだろう。

 いずれにせよマッドン監督が実行した多くの選手に複数ポジションを任せるという起用法は、今後のメジャーリーグの戦術に一石を投じることにもなりそうで、選手育成の段階から複数ポジションを守らせる流れが出てくる可能性があるように思う。

 すでに日本では大谷翔平選手の二刀流が完全に定着しているが、今後メジャーリーグに挑戦する日本人選手も複数ポジションをこなせなければ簡単には契約できない日が到来するかもしれない。

※成績は9月15日時点のもの。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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