新体操、日本に突きつけられた課題 強い選手の育成へ、強化策の転換を

椎名桂子
 日本にとって3大会ぶりの出場となったリオデジャネイロ五輪・新体操個人種目で16位だった皆川夏穂(イオン)。9月8日〜11日にかけて、日本では今シーズン最初で最後の試合となるイオンカップ世界新体操クラブ選手権に出場し、個人総合8位に終わった。

垣間見せたスケール感

今季唯一となる日本開催の試合で、リスクの高い技に挑戦した皆川だったが、結果はついてこなかった 【写真:赤坂直人/スポーツナビ】

 決勝ラウンドからの出場となった皆川は、初日、フープでは終盤で落下、ボールでは演技序盤とラストで2回の落下と、安定感に欠ける演技となってしまった。

 前半種目を終えた皆川は「日本で演技をする機会は少ないので、自分の持っている良いものを見せられたら、と楽しみな気持ちでいたが、それが欲になってしまい、演技中にその欲に勝つことができなかった。とても悔しい」と肩を落とした。しかし、落下以外の部分では、たしかに海外の選手たちの中でも見劣りしないスケール感や美しさがあった。ミスさえなければ、と思わせる演技ではあったのだ。

 残る2種目へ向けて「明日は、欲を捨てて『踊っていて楽しい』という気持ちでやりたい。自分らしい演技を見ている人たちに届けたい」と意気込んだ最終日。クラブで17.966と全体5位の得点をマークし、リボンは一瞬首に巻きつくミスがあったものの、落下は防いだ。演技後に晴れやかな笑顔を見せた皆川だが、合計は68.215点。仮に落下がなかったとしても、全種目18点台以上をそろえてくる4位以上との差は大きいと言わざるを得ない結果だった。

「プレッシャーに勝てない」皆川の自己分析

 決して調子が悪かったわけではない。むしろ、「4種目ノーミス」を優先して五輪では抜いていた、リスクの高い技にも挑戦した結果のミスだった。今回のイオンカップが、皆川にとっては今年最後の試合だったため、「見ている人にもわくわくしてもらいたい」と挑戦したことが、裏目に出た形となった。

 大会終了後の会見で、皆川は「技の(成功)確率は上がってきていて、練習ではほぼミスなくできている」と言った。ただ、それが「本番になると演技中に不安も出てきてしまい、そのプレッシャーに勝てないでいる」と分析した。

 リオ五輪を振り返っても、予選4種目とも落下はなかったが、得点が伸びなかった。「フープでのジャンプを連続にできなかったミスは大きかった。ほかの種目にも回転数が足りない、技の精度が低いなど、減点につながる細かいミスは多く、申告通りに演技をやりきる強さが足りなかった」と本人は言うが、それも、「4種目とも落下せずに決めたい」という気持ちが強すぎたことが原因だ。

 アスリートが本番で実力を発揮するために必須とされる「平常心」を保つことが、今シーズンの皆川には難しかった。それが、五輪とイオンカップの両方での、ほろ苦い結果につながってしまった。

 “新体操大国”ロシアで練習を積んだ3年半に及ぶ強化策は、皆川の実力の底上げという点では十分に成果を挙げたと言える。が、成績という結果で判断するならば、もう一歩、と言われても仕方がない。技術も能力も間違いなく伸びている。しかし、それを本番で発揮する「強さ」が欠如していたことは否めないのだ。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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