輝き始めた新体操・皆川夏穂の可能性 支えあった盟友の思いを力にリオへ

椎名桂子
 6月15日、国立スポーツ科学センターにおいて、新体操のリオデジャネイロ五輪日本代表個人選手内定発表式が行われ、4月からの選考対象試合(ワールドカップ〈W杯〉イタリア大会、アジア選手権、W杯スペイン大会)で2勝をあげた皆川夏穂(イオン)が、リオ五輪の個人代表選手として発表された。

 皆川は、フープ、ボールの2種目の演技を披露し、「3年間、ロシアで練習させてもらい、たくさんの人に支えられてきた。リオ五輪では決勝に進出し、8位以内に入ることを目標に、見ている人に感動を与えられる演技がしたい」と抱負を語った。

新体操の未来を託された皆川、早川

日本としてアテネ五輪以来となる個人総合代表に選出された皆川 【末永裕樹】

 ジュニア時代、全日本ジュニアを連覇し、特別強化選手に選ばれていた皆川は、2013年3月からロシアでの長期合宿に派遣された。当時、中学3年生。皆川のロシア生活はすでに丸3年が経ち、4年目に突入している。

 皆川は、ロシア派遣が決まったとき、ジュニアチャンピオンではあっても、まだ全日本チャンピオンでさえなかった。しかし、強化部は、その時点でのトップ選手ではなく、3年後のリオ五輪、ひいては東京五輪も視野に入れ、15歳の皆川と、同じく特別強化選手だった16歳の早川さくら(イオン)に日本の新体操の未来を託す決定をした。

 これは大きな賭けであったが、その結果、2人は年々、世界での評価を上げていき、昨年9月、ドイツ・シュツットゥガルトで行われた世界選手権で、皆川が個人総合15位に入り、日本は04年アテネ五輪以来となる五輪の個人枠を獲得したのだった。この世界選手権で、早川は惜しくも17位(個人枠は15位までに与えられる)。2人が目標にしてきた「2枠獲得して、2人でリオに」は、かなわぬ夢となった。

 1枚になった五輪への切符は、今年4月からの4つの選考対象試合での勝ち数の多い選手に与える、との決定がなされた。同時に、勝ち数が並んだ場合は、枠取りに貢献した皆川を代表とすることも発表された。つまり、選考対象試合で2勝をあげた時点で、代表は皆川に決まることになる。

「1枠」の争いで世界の評価がアップ

 第1戦となった4月のW杯イタリア大会。皆川は、ボール、リボンでは素晴らしいパフォーマンスを見せ、いずれも17点台後半をマークし、種目別決勝にも残ったが、フープ、クラブではミスが出てしまう。対する早川は、4種目とも17点台という安定感を見せ、総合順位では早川が15位、皆川が22位。まずは早川が1勝を上げた。この試合を振り返って、皆川は、「4つの試合の結果で代表が決まるということで、緊張の度合いが大きかった。そのことを考えないようにしても浮かんできて、ミスが出てしまった」と語った。

 しかし、この試合での反省から、5月のアジア選手権(ウズベキスタン・タシケント)のときには、「自分の演技をひとつひとつやるだけ、という気持ちに変わった」という。
 アジア選手権は、直前になって早川が腕の不調から欠場。皆川は、早川との勝負から解放される一方で、日本チームを一人で引っ張るという重責を担うこととなったが、個人総合4位と健闘。そして、この大会で初めて、皆川はボールで18.100、リボン18.200と18点台をマークする。世界のトップ選手と競うためにまず必須となる18点台を、リオ五輪まで3カ月という時点でついにクリアしたのだ。そして、代表争いも不戦勝ではあるが1勝をあげ、リーチをかけた。

 6月に行われたW杯スペイン大会では、早川もボール以外は17点台にのせ14位と健闘するが、精神的優位に立った皆川は、それを上回る7位という好成績をあげ、2勝目。この瞬間、皆川がリオ五輪代表の内定を決めた。また、この大会でもボールは、18.100と18点台にのせる。ロシアなど強豪国の選手たちも出場する中でのこの得点と順位は、世界での皆川の評価が、ここにきて1ランク上がってきていることを証明している。

 山崎浩子強化本部長も、「皆川は、身体能力がすごく高い。ジャンプのダイナミックさや可動域の大きさもあり、世界でもあれだけなめらかに美しく演技できる選手はあまりいない」と胸を張る。「手具操作もロシアの選手にひけをとらない内容でやっている。五輪でも大きく凹む種目をなく、やりこなせれば、個人総合8位以内には十分いける力がある」とも言う。

 たしかに、内定発表式で披露した皆川の演技は、昨年までとは見違えるような伸びやかさと正確さがあった。動きと手具操作のスケール感が増し、手具の転がしひとつとっても、指先から指先まで気持ちよいほど正確になめらかに滑っていくのだ。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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