王貞治氏が語るイチローの存在感と影響力 「野球界に大きな意識改革をもたらした」

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第1回WBCで優勝し、ともに喜ぶ王監督(当時)とイチロー(右) 【Getty Images】

 米大リーグ・マーリンズのイチローが現地時間7日、メジャー通算3000安打を達成した。イチローがオリックスで活躍していた当時、福岡ダイエーの監督として対戦し、第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではともに戦い初代王者に輝いた王貞治氏(現・福岡ソフトバンク球団会長)に話を聞いた。

 イチローの存在を「日本の野球に大きな影響を与えている」と語る王氏。敵として対戦した時の存在感や、「心強かった」と語るWBCでのイチローの影響力などを振り返る。

日本で対戦した時は「ヒットなら仕方ない」

――最初にイチロー選手と会ったのはいつですか?

 最初にイチロー君に会ったのはホークスの監督になったときですね。1995年なので、もう21年も前かな。94年にシーズン210安打を達成した時は、テレビのニュースで見ていた程度でシーズン通して見ていないんだよね。210安打というのはわれわれの現役時代は考えもしなかった記録なので、すごいなと思っていましたが。

――そうすると福岡ダイエー(現ソフトバンク)の監督になられて、対戦相手としてのイチロー選手の印象はいかがでしたか?

 それはもう敵からすると嫌なバッターだったよね。広角でどこへでも打つし、不思議とヒットコースへ打球が飛ぶバッターで。それだけミート力が高いということだけど、まるっきり打ち取ったと言える打席は少なかったですね。さらにチャンスにも強く、やりづらかったですよ。

――その対策としては?

 もうヒットなら仕方がないという感じで。ランナーを置くと嫌な存在だったので、一塁が空いていれば歩かせもしたし、ランナーがいるときには打たれないよう細心の注意をしていましたね。

――イチロー選手は日本で7年連続首位打者を取ります。

 当時の選手もかなわないと思っていたんじゃないかな。首位打者はイチロー君で決まり。注目はどれ程の打率を残すか、という感じだったね。

「日本球界にとっても大きな誇り」

――日本での実績を引っ提げて、マリナーズへ移籍します。当時、MLBでも活躍すると予想されていましたか?

 ホームランを売りにしてアメリカに乗り込んでいったわけではないから、ミート中心ということで、それなりにはやれるだろうとは思っていました。守備もあるし、足もあるし。ただハードなスケジュールで、時差もあるアメリカで、あれほど華々しい結果を残すとは思ってもいなかったね。

 マリナーズ初年度からMVPを獲得しましたが、あれだけレベルの高いリーグでMVPに選ばれるというのは大変なことです。当時ア・リーグで14チームある中で、すごい選手もたくさんいるわけですから。

 そういう意味でもイチロー君の出現は、MLBとしても重要な出来事だったと思いますよ。想像できないようなスーパースターが出現したという感じじゃないかな。

――そして日米通算ながらピート・ローズのMLB通算最多安打を抜き、3000安打も達成しました。

 やはり野球選手としての資質が頭抜けていると思うよね。体力も、動体視力も若いときからは変化していると思うけど、42歳になってもあれだけレベルの高い世界で、あれだけの活躍ができるというのはすごいことです。42歳で現役選手としてプレーするだけでも普通の選手なら難しいことだし、厳しいMLBの世界で、いまも必要とされていることが素晴らしいですね。

――殿堂入りも確実視されています。

 3000安打で間違いなく殿堂入りするでしょう。このことは日本球界にとっても大きいですよね。MLBでプレーする選手はこれからも出てくるとは思うけど、殿堂に入るまでの選手は実際になかなか出てこないですよ。若い選手や子供たちにとっても大きな目標になるでしょう。

 27歳でアメリカへ行き、それから16年も現役でプレーするだけでも大変な偉業だけど、10年連続200安打、シーズン最多安打など頭抜けた成績を残しているし、盗塁、走塁、そしてスローイングも“レーザービーム”と呼ばれて、すべての面で周囲に強烈な印象を与えているというのは素晴らしいことですね。日本球界にとっても大きな誇りだと思います。

――前人未到の地点に到達していますが、その要因は何だとお考えですか?

 とにかくイチロー式ルーティンが確立されていて、それが野球人生を支えているのでしょう。その準備を常に最優先にして、自分なりのやり方で続けて、自分のスタイルを確立したことが、これまでの実績に現れているよね。心技体すべてで準備が整っているからこそ、MLBのハードなスケジュールを乗り越えられるのだろうと思います。

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