イチローを支えるバットとグラブ “体の一部”である道具のルーツを探る

岡田真理
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日米で4000本以上の安打を積み重ねてきたイチロー。そのバットは篠塚氏のモデルから生まれた 【Getty Images】

 道具に対する思い入れが強いことで知られるイチロー。記録を生み出し続けるバットは、“安打製造機”と呼ばれた元巨人・篠塚和典氏のモデルが原型である。グラブに対する強いこだわりには、スポーツ用具メーカー「ミズノ」の元グラブ製作技術者である坪田信義氏が応えてきた。今回はその篠塚氏と坪田氏に、それぞれの道具のルーツやイチローがこだわるポイントを聞いた。その中で、ピート・ローズとの共通点や、枠にとらわれないイチローの考え方なども浮かび上がってきた。

芸術的なバッティングを生み出す篠塚モデル

 自分のモデルを使っていると知っていても、日本球界時代にはほとんど交流がなかった篠塚氏。第2回WBCで、コーチと選手という間柄で初めて接点を持つ。ブレイクする前から「似ている」と言われていたイチローのことを、どんなふうに見ていたのだろうか。

――篠塚さんがイチロー選手の存在を知ったのはいつ頃のことでしょうか?

 彼がオリックスに入った頃ですね。当時オリックスの監督だった土井正三さんから「お前に似た奴がうちのファームにいるぞ」と言われたことがきっかけでした。スポーツニュースでバッティングを見た時、しっかり“ガツン”と打つのではなく、ボールの速さに合わせて自分から打ちに行くところが自分にちょっと似ているかなと思いましたね。

 ストライクゾーンから離れたボールでも捉えにいくので、コンタクトの技術は持っているな、足も速いから内野安打も稼げるなと、そんな印象を持った覚えがありますね。

――イチローさんが篠塚さんモデルのバットを使っていることはどのように知りましたか?

 ミズノの社員の方から、「イチローさんがいろいろな人のバットの中から篠塚さんのモデルを見つけて、それがいいと言って使っていますよ」と聞きました。息子(篠塚宜政/Honda所属)がイチローに会った時には「僕がここまでできたのは、お父さんのバットのおかげだよ」と言われたみたいで、それはとても嬉しかったですね。

細いバットを使える技術

――篠塚さんは、もともとどんなバットを使っていたのですか。
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著者プロフィール

1978年、静岡県生まれ。立教大学文学部卒業。プロアスリートのマネージャーを経てフリーライターに。『週刊ベースボール』『読む野球』『現代ビジネス』『パ・リーグ インサイト』などでアスリートのインタビュー記事やスポーツ関連のコラムを執筆。2014年にNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーションを設立し、プロ野球選手や球団の慈善活動をサポートしている。

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